パラダイムチェンジ

2003年05月09日(金) 日本は不景気なのか

さて前回、前々回と、経済について久しぶりに書いてみて、わかった事
が一つだけある。それは自分がとにかく、細かい数字の正確さに対して
からきし弱いって事である。

元々がアバウトな性格なので、数字の正確性というか、数字を覚えるの
が、とにかく苦手なんだよね。
いや、よかったっすよ、そのまま経済学の分野に進まなくて。
もしも、あなたやあなたの将来の子供が数学が嫌いで文系に進んだ人間
だったら、できれば経済学部には進まないほうがいいかもしれない。

などと、言いつつも今回も経済ネタ。しかもここで日本経済の今後に対
して大胆?提言。ただし、相変わらず数字的にはアバウトな話であるこ
とをあらかじめお断りしておく。

さて、まずはこんな問題提起をしてみよう。
果たして日本は本当に、不景気なんだろうか。

多分、これを読んだ人の大半が「不景気だよ」という突っ込みをして
いることだと思う。
いや、実際自分も不景気だとは思うんだけどさ。

株価は20年前の水準に戻っているし、大規模な倒産を含めて、倒産件
数は毎年更新しているし、失業者だって、5.6%だっけ?もあるし、
サラリーマンの平均年収だって実質下がってきている。
毎年決算時期には、○月危機なんて叫ばれ続けていたりするし。

でもねその一方で、例えば国民一人一人の生活水準が、果たして20年
前に戻ったかといえば、そんなことはなく便利な生活を送っているし、
今年はまあ、イラク戦争やらSARSやら色々あって、海外旅行に行く
人の数も減ってはきているけれど、20年前より数多くの日本人が今も
海外旅行をしているし、有名ブランド品を世界中で一番買っている国民
は、今も日本人である。

つまり、メディアが声高に叫んでいるほど、今のところは国民一人一人
が不景気感を感じることは、そんなにないんじゃないだろうか。
いやもちろん、そんなの感じたくはないし、これからもっとそれを実感
する可能性は高いわけだけれど。

マクロで見れば、個人消費が冷え込んでいるという指摘はあるわけだけ
ど、それはGDPに対しての個人消費の割合が落ち込んでいるっていう
事であって、ミクロ、というか個々人に割り振ってみれば、みんな意外
にお金は使っているような気がするんだけど。

例えば、少子化によって、家庭の子供にかける金額の総額は、少なくな
っているかもしれないけれど、一人当たりにかける金額は上昇している
と思うのだ。教育費とか、高級ブランドの子供服とかね。

ではなぜ、日本はこんなに不景気なのか。
その答えは、大雑把にいって二つあるように思う。

一つは、日本のお金がちっとも動かないこと。
そしてもう一つは、そのことによって経済成長率がマイナス成長に
なっていることである。

前回、バブル経済が起こる理由について、国内外から資金が豊富に流入
したから、という仮説を立ててみたわけだけれど、今の日本の場合は国
外から資金が流入しないだけでなく、国内の資金が停滞し、効率よく流
れないことが、この不況の原因になっているんじゃないかな、
と思うのだ。

例えば今現在の株式市場は、前回も書いたように、売り圧力が強く、
下げ止まらなくなっている。だから、日銀がいくら金融の量的緩和
(紙幣をじゃんじゃか刷って市場に流すこと)をしても、一向に不良債
権は減らない一種の異常事態になっている。この状態は、竹中ショック
の一環だという見方もあるわけだけど、とりあえず言えることは、株式
を売る人が多く、買う人がそんなにいない状況だからこそ、株式の平均
値は下がり続けているらしい。つまり需要と供給のバランスがすごく悪
いわけだ。

でも、その一方で、日本には1400兆円とも言われてる莫大な量
の預貯金が存在している。
普通に考えれば、この巨額な預金が、これだけ金利が安い日本から、海
外に逃げ出したり、一山当てようと株式市場に流れ出してもおかしくは
ないはずなんだけど、ちっとも動かないのが問題であるわけだ。

でも、これは現代日本人の特徴なのかもしれない。
なぜなら、昭和初期、日本政府が金解禁した(再び金本位制を導入した
こと)時には、当時の日本人の何%だかを占めていた日本の富裕層は、
金利の安い日本からより高利な海外へと資金を移し、その結果金融恐慌を
起こしてしまったわけだけれど、今回は日本人が高齢者を中心に平均的
に?その富を分散して持っているからか、それともまだまだ日本経済に
対しての信頼感があるからか、その資産は日本国内に留まり続けている。

逆に言えば、その多額の資金が日本国内に日本にあることこそが、日本
の信用を失墜させず、どんなに株価が安くなろうとも今のところは、日
本の体力の源になっているわけで、それが例えばアメリカとの大きな違
いといえるかもしれない。

でね、もしもこれらの預貯金額の、何%かでも流動性を持って、株式市
場に流れ込み、株式を買い出せば、日本経済は、再び動き出しそうな気
もするんだけど、残念ながらこれらのお金は、そんなリスクのある市場
には流れ出せない。

だって今の状態だったら、投資した分確実に還ってくるなんて保証は、
どこにもないからである。

だから、日本の不況を生み出している大きな要因の一つは、こんな風に
日本の株式市場及び、金融市場に対して、信用が持てずにいるという、
心理的な気持ちの冷え込みが関係していると思うのだ。

それは例えば雪印の不祥事隠しが起きた後、人々が皆、雪印の製品を
買うのを控えたようなものかもしれない。
かつて野村證券が株式の補填を一部の有力投資家に対して行ったことや、
それと相前後して株式ブームで皆こぞって株式を買い、バブルを形成し、
その後株式市場のバブルがはじけた時に皆で損をした痛手が今も深く
残っているからかもしれないし、そして今現在、こうしているときも
株価が大幅に下がり続け、買った時の金額より、下がることで今も
資産を減らしてしまっている状態に対しての恐怖感があるからかも
しれない。

で、先程も書いたとおり、日本が他の国々と一番違うのは、他の国々の
場合、国民の例えば数%のみが多大な富を持っているのに対し、日本で
は国民に広くその財が広がっているということだろう。

つまり突出した個人ではなく、国全体として多くの財を持っている形に
なっているから、その財が一つの方向性を持っては動きにくい、という
事である。

例えば、この前発表されたイギリスの所得番付では、総資産100億円ぐ
らいでは、まだ100位ぐらいにしかならず、総資産トップの人は何千
億円もの資産を持っている。
これは例えば、その大金持ちが、自分の資産の何%か、例えばほんの?
数100億円程度、を預けていた国から別の国へと移せば、それは一つの
投資の流れを生むのに対して、日本人富裕層の例えば数人が、自分の資
産の何%か、例えば数億円を動かしたとしても、大きな流れを生むこと
はできない、という事を指す。

逆に言えば、そのことが今のところ日本経済が大崩壊をしない逆支弁に
なっていると言えるし、別の見方をすれば、それこそが日本経済が停滞
している原因であるといえる気がする。

だから、もしも日本経済に再び流動性をつけようと政府が思うならば、
日本の金融市場と株式市場の信用を回復する必要があるんじゃないかな、
と思うのだ。

そんな風に日本市場に対して信頼が増せば、海外からの投資も増えるし、
今現在眠っている巨額な預貯金も動き出す。
少なくとも、株式市場に投資すれば、大儲けはしなくても、そんなに損は
しないと思えば、現在塩漬けに近い状態になっている金融資産の何%かは
動き出す可能性はあると思う。

これぐらい、こんな素人でもわかりそうな問題なんだけど、それがうま
い具合にいかないのは、日本の構造的な不況を生む構造?がある訳で。

それはすなわち、今の資産デフレを生んでいる金融機関に残る多額の
不良債権問題なんだけど、その根本の原因は、また別のところにある
ように思うのだ。

その根本の原因に関して、自分が思うことは近いうち、また別の機会
にでも触れたいと思う。
という事で次回は、経済成長率と私たちの心理状態について触れてみる。


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