パラダイムチェンジ

2003年04月28日(月) 生まれたところや皮膚や目の色で

今回目を引いたのは週刊SPAの中の「エッジな人々」というインタビュ
ー記事の中の一言。


―北朝鮮問題については。

「拉致問題は国家的犯罪だと思うけど、今まで積極的に話をしなかった
じゃないですか。『いつミサイルを撃ってくるかわからない』とか言う
だけじゃなくて、コミュニケーションすれば、絶対に変わっていくと
思う。テレビを見てると『北朝鮮は気持ち悪い国なんだ』って、
ある意味、日本人を洗脳しようとしているでしょ。



この発言を見て、うん、そうかも、と思わずうなずいてしまった。
それは身近な例で言えば、韓国のことを考えてみればよくわかると思う。
もしも昨年、日韓ワールドカップが共催ではなく、どちらか一方の国だ
けで開催されていたとしたら、どうだったろう。

おそらくワールドカップ開催以前と同じく、お互いに「近くて遠い国」の
ままだったんじゃないだろうか。
ワールドカップが共催になって、お互いに盛り上げましょうという気分が
高まったからこそ、少なくとも私は韓国に対してより近しい感情を持つ
ようになったし、それは今も変わらない。

そしてその気分を盛りあげてくれたのは、たとえばBOAだったり、ユン
ソナだったり、チョナンカンだったりしたような気がする。
すなわち彼らの姿をTVでよく見かけ、それがあたり前のように感じてい
る現在の状況は、おそらく5年前では考えられなかったことだと思う。

日本が韓国に興味を持つきっかけになったのは、'88年のソウル五輪
あたりからだと思うけど、その時はまだ、名古屋五輪を持ってかれたと
いう悔しさもあってか、韓国で挨拶は「アンニョンハシムニカ」ってい
うんだってよ、位の興味しかわいてなかったと思うのだ。


別の見方をすれば、あのイラク戦争で、アメリカ市民たちがあれだけ
フセイン政権に嫌悪感を示し、戦争に賛成した背景には、アメリカの
マスメディアが連日、イラク情報に関するネガティブキャンペーンを
連日繰り広げていたからだ、という話もある。
そう、まるで今日、私たちが北朝鮮の報道を目にしない日はなくなって
しまっているように。

ごく一般のアメリカ人って、国内情報には詳しいけど、海外の国がどん
な振る舞いをしているかなんてことには興味が薄い気がする。
それは、たとえば同盟国であるはずの、日本についても同じ。
おそらくアメリカで日本のニュースなんて、ほんのごくわずかしか目に
しないはずだ。

だからアメリカ人があれだけイラク情勢に関心を寄せた背景に、マスコミ
報道の影響があったことは否めないと思う。

でもね、ここで個人的に思うのは、その報道の姿勢だろう。
違う民族、違う国家なんだから、習慣やら考え方が違うのはあたり前。
でも、その小さな差異を大きくクローズアップして、そこにこだわり
続ける限り、お互いに共通点は生まれにくく、すなわち仲良くなること
は難しくなってしまうという事だろう。

ところで、先ほどの発言、一体誰の発言だと思います?
答えはインリン・オブ・ジョイトイ。エロテロリストの異名を持つ、グ
ラビアアイドルである。
バラエティ番組とか見てても、ただのグラビアアイドルじゃないと思っ
ていたけど、その一本筋の通った考え方には感心させていただきました。
ついでながら公式サイト もスゴイ。ご馳走様でした?


さて、話をちょっと戻すと、先ほどの例とは逆に、肌の色を越えて
見事に栄光を勝ち得た集団が存在したのを覚えているだろうか。
それはサッカーのフランス代表チーム。

FWのティエリー・アンリをはじめとして、白人ではない多国籍系出身者
が数多く代表選手として選ばれ、フランスW杯、2000年欧州選手権
で見事チャンピオンとなったチームである。

昨年のW杯では惜しくも予選敗退となってしまったけど、そのフランス
代表選手である、ティエリーアンリが昨年のW杯前、こんなことを言っ
ていた。


スポーツは多くの人々の心を開くことができる。'98年のチームは
様々な人種や背景を持つ選手で構成されていたし、フランスという国の
多様性をよく表していたと思う。僕たちができる唯一のことは、一番重
要なのはユニフォームの色であって、肌の色ではないということを世間
に示すことなんだ。優勝を決めたあの日、シャンゼリゼでは、ありとあ
らゆるバックグラウンドを持つ人たちが、お互いに抱き合ったりキスし
たりしていた。それまではそんな光景を見たことがなかったね。皆がす
ごく幸せそうだったし、フランス人であることに誇りを感じていた。
最高の気分だったよ。誰もがフランスが優勝したことを喜んでいた。チ
ームはフランス人を代表していたし、あれはフランスという国全体にと
っての勝利だったんだ。(雑誌Number World Cup special issue #1より)



フランス代表チームが予想外の活躍をして、W杯を母国にもたらした事。
その偉業の前には、肌の色や小さな差異なんて関係なく、一つになれた
んだと思う。そしてスポーツの世界では同様のことは沢山ある。

アメリカ国籍の選手で、バスケットやアメフトや陸上競技で、黒人のい
ないチームなんてありえないし、この前青森で行われたアジア大会だけで
なく、韓国と北朝鮮はスポーツ大会の期間中は戦争状態にあることを
忘れて、統一朝鮮の国旗を振ってお互いに応援しあっている。

スポーツの世界では簡単に一つになれるし、肌や習慣の違いなんて乗り
越えられるのだ。

この話を読み返したとき、ある歌詞を思い出した。
今日のタイトルにした、ブルーハーツ『青空』の中の一節。


生まれたところや皮膚や目の色で
一体この僕の何がわかるというのだろう



冒頭に紹介した、インリンの発言は、何も北朝鮮や他の国の人たちだけ
を指しているのではない。同じ事は、同じ肌の色、同じ民族である日本
人同士にも言えると思うのだ。
ということで、次回に続く、かも?


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