パラダイムチェンジ

2002年05月23日(木) 窪塚主演「ランドリー」を観た。

窪塚洋介主演映画、ランドリーを見た。
一言で言えば、これは不思議な感覚の映画だ。

小さな頃、頭に怪我をして子供のまま成長して、ばあちゃんの
コインランドリーで洗濯物が盗まれないように見張っている
主人公テル(窪塚洋介)が、コインランドリーが人の手に
渡ってしまった後、心に傷を持つヒロイン水絵(小雪)の
忘れてしまった洗濯物を届けに行く過程で、鳩使い?の
内藤剛など、様々な人たちに会っていく、というロードムービー。

さて、個人的にはどこに不思議だと感じたのか。
それは、この映画が、普通の映画の文体(と言っていいのか?)
とは、異なっているからだと思う。

例えば、映画のストーリーに起承転結のような展開はあまりないし、
主人公の行動にも一見脈絡はない。特に成長することもなく、
行き当たりばったりのように見える。

この感覚は、松本大洋の漫画や、吉本ばななや村上春樹の小説に
近い感じがする。
そう、つまりはこの映画は、ものがたり映画なのかもしれない。

ものがたりを整合性や、必然性といった形で捉えようとすると
少しおかしなことになる。
つまり、こういう展開だったら、こうなるはずだというような
シュミレーションのような話と、ものがたりは、相性が悪いん
だけど、実は前者のような小説や映画が多かったりする。

だけど、現実の私たちの行動のすべてがなんかの筋書きに沿って
生きている訳ではないし、自分たちの行動のすべてを説明できる
わけでもなかったりする。
意識がすべてではなく、無意識が左右する偶然性があったりする。

これは、自分自身の考えではなく、実は心理学者、河合隼雄が、
村上春樹との対談「こころの声を聞く」(新潮文庫)の、受け売り
だったりするんだけど、すなわちものがたりは日常生活をおくっている
私たちの無意識に響くからこそ、心を動かしたり、癒す作用がある。

そして、この作品は、脚本、監督を担当した監督自身の物語であり、
内面のドキュメンタリーであるような気がする。
この映画の登場人物たちは、みんなどこか弱く、そしてやさしい。
敢えて、邪推をすれば、それでもなんとかなるって言うのは、
監督自身へのメッセージなのかもしれない。

そしてその監督自身の物語を成立させる上で重要だったのは、
子供の心をもったまま成長した主人公テルという役に存在感を
与えたのは、窪塚洋介という役者の個性だったといえるかも
しれない。

窪塚は、何色にも染まると思うが、その下に必ず強烈な個性の見える
稀有な役者だと思う。彼もまた、不思議な存在感のある人である。

この役は窪塚洋介にしかできなかったのかどうかは、わからないが
窪塚洋介が主人公を演じたことで、この作品は説得力をもったと
いえるかもしれない。

うーん、また必ず観たいとは思わないんだけど、機会があったら
また観たいって感じかも。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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