掛川奮闘記

2008年12月01日(月) 081201_幕張ベイタウンを見学する(1)

 先週の土曜日に幕張ベイタウンを見てきました。

 幕張ベイタウンとは、千葉県企業庁が手がけて千葉市美浜区打瀬(うたせ)に作られた集合住宅群のことです。

 この地域の特徴は、建物の高さを一定にした中庭のあるロの字型の建物をヨーロッパ風のデザインで統一したことで、素晴らしい街並み風景を作り出すことに成功しています。

 (幕張ベイタウンHPより)

 今回はこの地区のプランに初期から携わったM先生にご案内をお願いして見学をさせてもらったのですが、まちづくりの上では面白い話が満載でした。

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 M先生とは京葉線の海浜幕張駅で落ち合って、まずは駅北側の商業エリアを解説していただきました。

M先生「ここは駅前の商業機能を計画しました。最初はあまり店がなかったのですが、見ていただくと分かるように今では非常に安い作りの建物にフランチャイズの居酒屋などがたくさん入っています。売り上げも良いようです。建物はとにかく安く仕上げて3年くらいで減価償却をして、うまくいかなくなったらすぐに処分するつもりで商売をしているんですよ」
私「大型の建物に入るのはフランチャイズばかりのようですね。地元の優良な個店が商売をやる余地はないのでしょうか?」

 

「もう40年以上も前にアメリカに留学していた頃にすでに、アメリカの地方都市では個店がどんどん消えて行きました。みんな車に乗って大きなショッピングセンターに行き、安くたくさんのものを買うというライフスタイルが始まっていたのです。私はそのときにもう単純な形では個店は勝てないと思いました」
「しかし例えばヨーロッパなどではまちなかに大型店ではない小さなお店が商売をしていられているように思うのですが」

「私もそれを少し調べてみたのですが、どうもヨーロッパでは新しく移民で入ってきた人たちがそうした個店という形態の商売を昔ながらの形で営んでいるのが多いようです。そういう意味では現代的ではない商売の形態を継承している移民層がいるうちは個店も残るということなのかもしれませんね」
「なるほど、そういうことですか」

「ええ、しかしヨーロッパなどでは大学進学率が低く、学問で身を立てる人は限られていて職人層とホワイトカラーが分けられているのに対して、ほとんどの人が大学へ進学して、サラリーマンになろうとしている日本では個店の商売を次ぐ人は少ないでしょうね」

 駅の南側には今度は二階建てのショッピングモールが展開されていました。衣料系のお店がたくさん入っていて、結構な賑わいです。

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 さて、そこから緑の多い公園を抜けるといよいよ幕張ベイタウンです。歩道橋の上から見ると、建物の高さが揃っていてヨーロッパの街並みを思わせます。こんな事が本当に出来たことが驚きです。

 

私「こんなデザインの統一された街並み作りは他のところでは滅多にお目にかかれません。なぜこんな事がここでは出来たのでしょうか」
M先生「それは、最初にその当時の知事さんが偉くって、『私はここをはいつくばってでも良い町にする』と公言したことがきっかけのようです。その発言は政治的な意味合いを強く持ち、そのためこの幕張のまちづくりには歴代極めて優秀なスタッフが集められました」
「なるほど、人材を集めたのですか」

「ところが人間としては優秀だったのですが、ことまちづくりや景観づくり、建物のデザインといった専門的な領域は全く分からない人たちばかりでした」
「おやおや」

「しかしそれがまた逆に幸いしました。彼らは『自分たちは分からない』ということが分かったので、専門家を集めてその意見には実に真剣に対応してくれたのです。その結果、デザイナーや専門家たちが大いに腕をふるうことが出来たのです」

 立派なリーダーの存在とそれを受け止める優秀なスタッフたちの合作のようですね。

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 まちの中は車道と歩道の段差がほとんどない上に、路上駐車はたくさん見受けられます。このあたりは…?

M先生「路上駐車はありだと思うんです。人と車の共存を許容出来るまちにしようというのがコンセプトです。だから幹線道路は別として区画の中には信号をつけていません。車はゆっくり走って歩行者に気をつけるべきエリアだという認識を持って欲しいということなのです」
私「それは随分大胆ですね」

M先生「最近は信号をつけろという意見が出始めたり、中の道路を飛ばすタクシーなども見受けられて、始まった当時(1995年)の理念が薄れかけているのが心配ですが、まあ住民の力で解決出来るでしょう」

 街並みは一階部分にお店を入れて、その上が住居という形態を基本形にしていて、統一が合って実にきれいです。

 ぜひ機会があれば一度ご覧ください。

 個性的なロの字型の住居については次号でお届けします。


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