| 2005年08月25日(木) |
050825_雪氷輸送シンポジウム |
雪氷輸送物流システム検討調査(詳しくはここ)の意義について東京でシンポジウムを開催しました。台風11号の本土直撃を受けながらの綱渡りでした。{/kaeru_rain/}
今日は、 ■北海道の氷が東京を冷やす の1本です。
【北海道の氷が東京を冷やす】 テレビの天気予報では各局がこぞって台風11号の本土上陸に警戒を呼びかけるなか、北海道から嵐の中へ飛び込んでの雪氷輸送シンポジウム「北海道の氷が東京を冷やす」を開催した。
会場は築地にある朝日新聞本社横の朝日ホール。
雨の東京へ向かうのに傘を忘れて、地下鉄大江戸線築地市場駅のコンビニで傘を買ったら、なんとホールまでは地下鉄駅から雨に濡れずに行けるのであった。 ほんのちょっとしたうっかりのダブルで傘が一本無駄に増えました。
写真にあるように、会場の入り口には今回プレ輸送調査で用いた氷を切って並べてみた。
北海道の自然の氷でひんやりを味わってもらいつつ、北海道の氷を見てもらい、シンポジウムの関心を高めようと言う試みである。陰ではスタッフが2m×1m×45cmの氷を地下の駐車場で汗をかきながら大きな氷切り鋸で切り出して、台車で3個ずつ持ち上げるという苦労があった。
氷には潜熱という性質があって、「0℃の水」と「0℃の氷」の間には80calの熱量が潜んでいるのである。水1gの温度を1℃上げるのに1calの熱量を必要とするから、「0℃の水を80℃のお湯にするだけの熱量」と「0℃の氷と0℃の水にするだけの熱量」は同じなのである。
だから氷を運んでいるということは、同じ重さの水に加えてそれだけの冷熱エネルギーを運んでいるということにもなり、これを冷房のエネルギーにしようと言う発想なのだ。しかし実際に扱ってみると氷は重くて滑るので扱いがなかなか難しい。また自然状態での保存も課題だ。
こういう可能性や課題についてお伝えをしようと言うのが今日のシンポジウムなのである。
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14時半から始まったシンポは、大規模長期食料備蓄基地構想推進協議会事務局長の小嶋英正氏による氷と我々の社会の関わり、そして今日までの経緯などが紹介された。
この中では選挙で話題の国会議事堂も氷冷房のシステムが作られているという秘話が紹介された。今は使われていないが国会議事堂も建築された時代にあって、最新でかつ環境に優しかったのである。 小嶋さんの夢は、「いつか国会議事堂を氷で冷やしてやりたい」というもの。実現の正否はこの雪氷輸送プロジェクトにかかっていると言えよう。
続いては各界の皆さんによるパネルディスカッションで知見紹介と意見交換。
コーディネーターは、朝の情報番組「みのもんたの朝ズバ」に月曜日のコメンテーターとして出演中のジャーナリスト木元教子さん。
パネリストとして、建築分野から横浜国立大学の佐土原聡先生、室蘭工業大学の媚山政良先生、環境ジャーナリストで東京の打ち水プロジェクトの仕掛け人でもある枝廣淳子さん、国土交通省からこの雪氷プロジェクトの仕掛け人の川合紀章調整官、そして小嶋英正氏をお迎えした。
コーディネーターの木元教子さんはさすがに場の仕切が上手で、シナリオからはずれる話題を誘いながら、しっかりとポイントを抑えて元に戻してくださる。
枝廣淳子さんは環境問題で、「海外の情報は日本にたくさん入ってくるけれど、日本の環境対策などの情報が世界になかなか発進されないのが残念」という立場から、Japan for SustainabilityというNGOを立ち上げて、英語で情報発信をされている、環境の世界では著名な女性である。(ホームページはこちら)
「環境は少しずつ変化していく中で、突然自己増殖的に劇的に変化する瞬間があって、それをレバレッジポイント(テコの点)と呼んでいます」というのは怖い話。
「例えば北極の氷が今溶け始めていますが、最初は氷は白いので光が当たってもほとんど跳ね返してしまい熱の均衡が保たれるのですが、氷が溶けて海面が出てしまうとそこは黒いために熱を吸収して海水温が上がりさらに氷の溶けるスピードが上がるという悪循環が急速に広がるのです」
「また、今ロシアの永久凍土が融け始めています。これは二酸化炭素の増加などによる大規模な地球温暖化が原因と言われていますが、永久凍土が融け始めるとそれまで地下に押さえ込まれていたメタンが放出し始めます。メタンの温暖化促進率は二酸化炭素の16倍と言われていて、じわじわとした温暖化がメタンの放出に繋がるとある時点で一気に温暖化が進むということになりかねないのです」
なかなか怖い話だが、メタンハイドレートの問題はまた別の機会に譲ろう。
佐土原先生からは、「エコアイスは本来は水でも良い冷房を氷で行うので省スペースで冷房をするのに良いが、これまで自己閉鎖システムが前提であるので、水の管理や安定供給に難があります。神戸の六甲アイランドなどでは供給出来るときだけ温水が利用出来るという『なりゆき供給』ということも始まっているので、参考になるかもしれません」とのこと。
媚山先生からはこれまでの沼田や美唄での雪冷房の取り組みが紹介され、また氷で直接冷房をすることもありえるのではないか、との提言があった。
枝廣さんからはさらに「『環境意識が高まれば…』と言う前提は難しいと思います。環境コストの負担に対しては一般の人たちの応援が必要で、そのときにはロマン、楽しさ、恋人との共有、見えやすさといった要素が必要なのだと思います。私も今回初めてこのようなプロジェクトが動いていることを知りましたけれど、もっともっと私も含めて情報発信をしていただきたいと思います」とのこと。
「アイディアですけれど、都会から委託を受ける冷蔵庫をつくってはどうですか?」との枝廣さんに、木元さんが「そうよ、巨大な雪のワインセラーを作るのよ」で会場は爆笑でした。
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枝廣さんは今年札幌へ来たそうだが、「とても良い言葉を知りました。『もったいない』は最近話題になってよく知られていますが、北海道では『いたましい』って言うんですね。東北では『いだますぅい』です。この『もったいない』という概念は韓国、台湾、タイ、フィリピンなど東アジアの人たちは感覚的に分かるのですが、英語で説明ができません。『もったい』というのは、そのもの自身が持つ『全うすべき役割』でそれが中断されるから『もったいない』なんです」
「北海道と東京が氷で地域連携をするのに加えて、意識の地域連携も出来ると良いですね」とのこと。
木元先生は最後に「台風なのに来てくださった会場の皆さんに感謝申し上げます。このように、氷の冷熱エネルギーを使おうというので、ものは冷たいんですけれど、やっている人たちは熱いんです。これからも関心を持ってください」と言ってくださった。
会場からは「台風で来るのを止めようと思ったけれど、来て良かった」という声が聞こえた。
今日の参加者は約250人とのこと。第二弾、第三弾の東京シンポジウムや札幌での開催なども考えられるかも知れない。
我々ももっと情報発信をしなくてはならないことを痛感した。この東京で多くの人たちの関心を呼ぶことは簡単ではない。
しかしまずは情報発信第一弾が成功と言って良いだろう。関係者の皆さん、ご苦労様でした。
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帰りの頃には静岡県が暴風圏内に入っていて、9時の最終便が飛ぶかどうか冷や冷やしながら空港へ向かう。
飛んでしまいさえすればなんとかなるとは思ったが、なんとか欠航にならずにすんだ。航空会社もがんばっている。
ま、皆がんばっているのだ。
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