| 2004年02月28日(土) |
040228_現代中国の影 |
【スローライフ講演会】 商工会議所が創立50周年最後の事業が本日の講演会で、午後3時から市内のホテルで開かれた。
講師は前東京外語大学学長で、現代中国問題の権威である中嶋嶺雄先生。中嶋先生は長野県松本生まれで、東京外国語大学の中国語科を卒業されて東大の大学院に進み、数々のご活躍の後に昭和52年からは東京外大の教授に就任、平成7年から6年間、同大学の学長を務められた方である。
台湾の前総統李登輝氏とも親交が深く、李氏が信頼を寄せる日本知識人の一人でもあるのだそうである。相当内容の濃い話が期待できそうである。
【国際教養大学の話】 中嶋先生の最近の話題としては、今年の春に秋田県雄和町に開校される国際教養大学の初代学長に就任予定であると言うこと。この大学が凄いのは、地方からの新しい大学の風を起こす志に燃えていて、「現代の松下村塾を作りたい」という意気込みに燃えているのだ。
そして大学のシステムとして、入試に不合格でも強く入学を希望する学生を履修性として受け入れて、一年間授業を受けた後、成績優秀者は二年次から正規学生に昇格できる、敗者復活制度を導入するのだそうだ。
また逆に入試に合格しても、成績不良ならば退学となる。授業は全て英語で、在学中に米国か中国への一年間の留学が全学生に義務づけられるのだそうだ。まさに凄まじい、エリート教育である。
中嶋先生の強い意向で、この大学の図書館は24時間開館することになるのだそうだ。「コンビニでさえ24時間空いている時代ですよ、本の読めない図書館に意味はない」とも。
教員は三年の任期制で年俸制で公募したが全国から人材が殺到したそうだ。これだけ厳しそうな大学にもかかわらず、大学の受験倍率は23倍だったそうで、ハイレベルの学生が集うて最高の教育を受けて地方から輩出されるという時代が近づいている。
明治時代に多くの志士を輩出した松下村塾にならって、現代版松下村塾に今注目が集まっている。
【今日の中国の話題】 さて、そんな中嶋先生からの開口一番の話題提供は、「皆さん、今この瞬間に中国に関連して何が世界で起きているかご存じでしょうか」というもの。会場からは誰も手が上がらない。
実はこの講演が行われていたまさにその時に、台湾では台湾島の西海岸沿いに南北を結ぶ500キロの間で、中国が台湾に向けてミサイルを配備したことに講義するための住民150万人が手をつなぐ「人間の鎖」デモが行われていたのである。
このことは李登輝前総統が呼びかけ人になって行われたもので、3月20日の総統選で再選を目指している陳水扁総統の決起集会も兼ねているものである。実はこの2月28日という日は、台湾に渡った国民党政権が1947年2月、2万人以上の台湾住民を殺害した「2・28事件」の日なのである。
台湾は親中国の国民党政権の長い弾圧下にあったのだが、国民党の総統の李登輝氏は生粋の台湾人としてのアイデンティティを持っており、抑圧していた国民党の総統でありながら、中国に対抗する政治姿勢を示し、アンチ中国としての独自路線を進む道を選んだのである。
もともと中国が台湾を支配したという歴史的な事実もないことから、「台湾も含めた一つの中国」という考え方は、中国の中華思想にも含まれないような考え方なのだが、中国独特のロジックにより現在の日本はそのことを認めて国交回復をしたのである。
中嶋先生の一貫した主張は、「日本は中国に対する幻想を捨てて、常識というレンズを通してありのままを見るべきだ。そして親日で日本の50年間に及ぶ統治を真に感謝している台湾をもっと大切にしなければならない」というものである。
外遊中に悪天候のために台湾空港に緊急着陸した政府専用機から一歩も出なかったことを自慢げに話す、【ご立派な】外務大臣も過去にいたが、そういう政治家が国会の要職につくのが、悲しい現代日本の政治の貧困であるとも言える。
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さて、そんな中嶋先生は二年に一度は必ず中国を訪れてご自身の目でフィールドワークに努めておられるということだが、その際には一流のホテルではなく旅舎と呼ばれる安宿に泊まることにしているのだそうだ。
中国に詳しい商工会議所の会頭によれば「先生、それは私らには相当勇気の要ることですなあ」ということだそうで、衛生面や環境面で柔な日本人には耐えられないのだそうだ。
そしてその目でご覧になった中国の現実を一言で言えば、外(外国)から見える玄関だけをぴかぴかにしているようなものだそうで、国内の貧富の所得格差はおよそ100対1で、海岸沿いの経済発展しているところへ向かって貧乏な内陸から労働者が殺到している現状なのだそうだ。
中国は国土面積が日本の26倍(台湾を入れれば27倍)で、人口は13億人というから約10倍。まだまだ経済発展の余地はありそうに見えるが、実は可住地面積はなんと日本の3倍しかないのだそうだ。
そして経済発展を追いかけ続けているために、環境面の配慮は全くおろそかにされていて、水不足や電力不足などのエネルギー問題にも直面しつつある。農業問題も深刻で、このままいけばやがて中国は巨大な穀物の輸入国に転落する可能性が大きいのだそうで、現に小麦は既に輸入に転じているのである。
しかし政治体制は相変わらず共産党独裁政権で、このことは天から任ぜられた天子が一切の政治を行うという、中国四千年の中華思想そのものだという。したがってこの国では民衆が自ら指導者を選ぶという政治体制は取らないし、あくまでも自民族優先主義は変わらないのだ。
現在の中国は2008年の北京オリンピックが最大の国家プロジェクトであり、翌2009年には上海万国博覧会も控えていて、このことに向けて国中を挙げて取り組んでいる。これらが果たされるまでは国際関係を乱すようなことはないと見られるが、これらが終わる2010年あたりになると、上記の社会矛盾が一気に吹き出て国家維持が不安定な時期になる可能性があるという。
中嶋先生はそういう時期にあって、「現在の中国の胡錦濤(こきんとう)総書記が中国のゴルバチョフになる可能性もあるのではないか」とおっしゃった。いわゆる無血革命のような体制の交代である。
いずれにしても、現代中国の権力の腐敗ははげしく、民衆の心は離反し始めているのだが、それを一つにするためのツールとして反日運動が展開されているフシもあり、靖国神社を始めとする中国からの抗議に対しては、毅然とした態度を示す必要があるだろう。
中国は脅してへこへこする者は家来と見なすというので、日本がいくらODAで政府援助をしてもそれは朝貢貿易と同じで、家来からの貢ぎ物と同等と見なされているのである。だからODAには感謝のかの字もないのだ。堂々とものを言う対象の方が文句こそ言え、対等に感じるらしい。
日本もまさに中国を、「毅然とした態度が必要な友人」なのだと思った方が良いようだ。
中国が農業輸入国になると言うことは、単に中国国内の問題ではなくて、世界レベルでの食料不足の問題に発展するのだ。鳥インフルエンザでおたおたしているどころの騒ぎではない。国内農業の問題を改めて考える必要があるようだ。 こういうためになる話を聞ける人は幸せだ。
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