乗っているバスがとあるバス停に近づいた頃、 濡れて歩くにしてはとても無理と思いながら何とはなしに窓から外を見る。 そのバス停の近くに40代初め位の女性が傘をさしながらもう一本、真新しい傘を持って立っていた。 私は、心の中で自分に賭けをしてみた。 今、降りようとしている人は3人、 一人は高校生(男子)その雰囲気からして2年位かな。 もう一人は、中年の女性。 そしてもう一人は、幼児を抱いたおばあちゃん(もしかしたらお母さんかな) それで ああ、あの人が待っていたのは、この子供連れの二人だ。 そう感じた。だって、外をかなり気にしながらバスの中を前のほうに進んでいたもの。 賭けはハズレだった。 傘を持って迎えに来たのは、男子高校生のお母さんだった。 そのお母さん、息子の顔を見ると同時に、その新しい傘をさっとさしかけてやると、 二人で、バスの進行方向へずんずん歩いていってしまった。 その間、二人には会話はなし。 そうか、そうだよなあ、今は、なんていったってケータイがあるんだ。 これからバスに乗るから、何時頃来てねって、連絡すればバス停まで傘を持っていくことが出来るんだ。 う〜ん。優しいお母さんだなあ・・・ 家の息子たちがその年齢のとき、私は傘を届けるなんてことはしたことがなかった。 仕事も持っていたし、息子たちも親に連絡なんてくれなかった。 平然と濡れてくるか雨宿りしながら帰ってくるか。 でも、それが原因で風邪を引いたなんてなかったような気がする。 けど、私が小学生だった頃はどうだ? 母は、30分もかかる道を歩いて傘を学校へ届けていた。 届けるだけでさっさと戻り、直接受け取ることはなく先生からだったけど。 今思えば、私ってあんまり優しくない母だったのかも。
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