403 Forbidden

2004年02月14日(土) アンプラグド

アコースティックギターを初めて買ったのはある年の五月だった。
芝居の公演が終わった二週間後に、僕は当時付き合っていた彼女と別れた。
その前の週に僕は違う女性と会っていて、
どちらが好きなのか曖昧なまま、
僕の態度の変化に気がついた彼女の方から
別れようと切り出された。
そして、今でも人生最大だと思っている失敗をした。
僕は頷いて「しまった」のだ。

恵比寿の駅の山手線のホームで別れた彼女は、ずっと僕のほうを見ていた。

僕はその足で次の山手線に乗り、駅を乗り継いで楽器屋へ向かった。
そしてレッドサンバーストのアコースティックギターを買った。
馬鹿丸出しの僕は、暫くは彼女のかわりにこれを抱いていよう、
なんて考えていた。

しかし、澄んだ音が出ていたはずだったそのギターは、
いつのまにかネックにヒビが入ってしまっていて
少し濁った音を出すようになった。
そしてこの前、妹がギターを始めたいというのでこの前実家に預けることにした。
保証書に掛かれていた日付の意味を笑い話にして。

本格的に習おうと思ったときにそれからもう一本ギターを買ったのだが、
あのギターほど弾いていない。
定価で言えば3倍もするそれは、それなりにいい音がするのだが、
音以外の何かが違うように感じる。

そして、僕は音楽で飯を食おうという夢は夢で終わらせることにした。
また別の方向へ向かおうとしている。夢へ向かおうとしている。
それでもいつかは回帰するのだ。濁った、優しい音を奏でるギターへと。
僕のしたいことがこれで伝わるだろうか?


 < 過去  INDEX  未来 >


constitution [MAIL]

My追加