話は前に戻りますが、高3の秋から冬にかけての寒くなってきた時期、学ランの下に白のパーカーを着て行ったことがあった。まだ新しかったそれを着るという意味は単に「寒かったから」といった理由付けでおしまいなのだが、ちょっと違った。 すでにご紹介したとおりの幼かった私は、自分でいうのもなんだがとても実直で素直だったので(笑)学校指定の制服以外のスタイルで登校したことがなかった。なので朝は毎日自分でワイシャツのアイロンがけをしてから家を出ていたのだが、このパーカーを着るようになってから朝がとても楽になったように記憶している。それは同時に自分の持つ既成の規格に対する反抗か、それともそれまで自分が貫いてきたバカげたこだわりに気付いたか、はたまた生活が怠惰に流されてそれまでの自分の窮屈さに着いていけなくなったか。
あのパーカーはとても私に似合っていたようだ。2つ下の後輩であるハマちゃんにとても褒められた記憶が甦ったのは、それが10数年ぶりにタンスの奥から出てきたからだ。
「純白って先輩にとっても似合いますよね」
そのハマちゃんの言葉をいつもどおり苦笑いで受け流した私は、額面どおりに受け止められない彼女の持つその私への評価に対し心の内で反発していた。そこへすかさず横やりを入れたのがハマちゃんと仲の良い電ちゃんだった。
「白ってすぐ汚れが目立つようになるからイヤなんですよね」
(ナ〜イスアシスト! 電ちゃん)と思った自分は残念だが今ここにいる私だ(笑)。どちらの少女の言葉も当時の私には苦いものでしかなく、素直に受け止められない自分がいた。
出てきたパーカーはすでに色あせているが仕事くらいなら十分耐用できる。なので今シーズンはそれを活用させてもらってから用済みにさせてあげようと思う。
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