ここ数日の日記の傾向からすると、いかにも嶋さんのことを四六時中考えていたかのような書き方だが(笑)、事実は違う。どちらかといえば私の頭の中を支配していた女性は相変わらずいっちゃんの方で、彼女自身の存在を恋愛の範疇で片付けられればどれだけ楽だったか、その後の恋愛遍歴も彩りに満ちていたかもしれない?(←あり得ねぇ) 最後に目にしたいっちゃんの黙して語らない姿は私の人間不信をあおるものでもあり、語られていない彼女の中にある言葉を信じたい自分の矛盾した感触も確かに存在していた。結局私はその矛盾を抱えたままその後を過ごし、10年越しにいっちゃんと再会する機会を迎えることになる。
良くも悪くもいっちゃんの影響下にありすぎた私が嶋さんとの関係を健全に保っていくために必要な要素は、当時の自分の不器用さからすれば不可能なことであり、そういった発想すら思いつくものでもなかった。私は全く性質の違う二人の女性を自分の中で同じように扱うことは出来なかったし、一方を失ったからといってもう片方に擦り寄るようなことができる性格でもなかった。
色々な何かを考えながら教習所に通った夏が過ぎていった。いっちゃんと過ごした前年の夏と同じ暑さを、ただ無機質に感じていただろう。
嶋さんの最後の手紙はその夏が終わる間近、9月上旬に私の手元へ届いた。
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