朝帰りをして睡眠を摂ってから登校したのは昼に近い時間だったと思う。はっきり言うと文化祭の最中のことはほとんど記憶に無い。いっちゃんと周さんが中心になって下級生を使って切り盛りしていたので、3年である私たちの当日の仕事は無かった。なので客用に用意する予定の茶菓子を暗幕の裏で拝借するくらい時間を持て余していた。
ラザもタケダも各々勝手に登校していたのでどこに行ったか分からない。やることが無いからといって文化祭で沸き返った校舎内を一人で見て歩く気は起らず、部室に行くことにした。
その時に考えたのはきっと仲間たちの交友についてだっただろうか。この部屋の人間関係だけが全てでない彼らに奇妙な嫉妬を感じていた? 楽しみを共有できる空間が別にもあることへの嫉妬。特にいっちゃんに対して強くそう思った自分はもう立派に恋をしていた。前夜、特別な思い出ができた喜びと彼女について実は何も知らない自分と、そのギャップはどうやったら埋まるものなのか、そこに考えを及ぼすほど切羽詰っている訳でもなくやたらと楽観的だった。まあ今でもその辺に関しては変化していないかもしれないが。ただ、何か腑に落ちない、目の前にいっちゃんがいないことへの不満でわだかまっていたことは事実だ。
そんな感じでボケッとしていると、不意に部室の扉が開いてハマちゃんが入ってきた。おそらく当時の彼女も居場所を見つけられずに同じ場所へやってきたのだと思う。
私の姿を認めるや、ハマちゃんはにっこりと笑った。彼女の笑顔は少女だったあの頃が最も輝いていたように思う。まあこう書くと本人には大変失礼だな...(笑)。その時私は2つのイスを向かい合わせて足を片方に伸ばして座っていた。そこに近づいてきた彼女は何を思ったか私の足の上からイスに腰掛けようとしたので、つい足を引っ込めてしまった。
。。。彼女には今でも悪いことをしたなぁ〜と思っている。どうも私はそういうところも気付くのが遅い。ハマちゃんはイスではなく私の足自体に腰掛けようとしていたのにそれを引っ込めたものだから、私の目の前でバランスを崩してイスに尻餅をついてしまった。
そこで初めてハマちゃんの意図を理解した私は出来得る限りの言い訳をした(^^;; が、しばらく彼女は口を聞いてはくれなかったのだった。ただイジけた感じで恥ずかしそうにいつまでもうつむいている彼女の横顔はかわいくて素敵だと、正直そう思った。
これならまあ面食いのタケダの目に留まるのも無理はないな...。って普通そこまで慕われてるなら、いっちゃんはほっといてそっち向くだろう?(笑)
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