活気に満ちた夏休みも終わり、3年の2学期が始まる頃だっただろうか、ノリとしては益々加速度を増して熱くなっていた時ひとつの提案が銀さんからあった。それは銀さんの地元が中心となって毎週行っているバスケットのチームを見に来ないか、というものだった。銀さんはバスケットの経験はなかったが、高校時代は陸上部長距離班のエースで馴らした持ち前の体力があり運動が好きだったようだ。 ラザは行く前から大乗り気だった。この頃から周さんや銀さんとの信頼関係が増していった彼にとっては当然の帰結だったかもしれない。最初迷っていた私も「1回だけなら」といった感じでついて行ったのを覚えている。
文化祭で作品として書いた『秋』の「オレ」と同様に、中学で部活を引退する頃の私はバスケットに対して逃げているだけで、好きで始めたそれが非常な重荷だった。当時のそんな思いを後悔しつつ書いたのが『秋』だった。物語の中は自分の思うように書ける。再びコートに立つ、授業では出来なかった、本気でバスケットが出来る場所が用意される...、果たして私は「以前のオレ」のままなのかそれとも?
何事にも後ろを向きたがる自分にとってこの頃のノリは私を前へ進ませる潤滑油だったことは言うまでもない。
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