そうやって考えた次の日の朝はまたいつものように快活だった。まあ2年生の頃に比べれば朝から気分が良いのは格段の変化であり、若い力の持つ活力をやっと自分も得られた気もした。
「だいじょうぶですか? 先輩」
いつものように登校して部室に行くと数人がすでに来ていて、代表という感じでいっちゃんがそう私に聞いたように記憶している。我ながら大人気ないことをしてしまったなと苦笑しつつ「だいじょぶだよ」と返答してもまだ疑っている面々の気持ちは
「怒ってます?」
と言ったいっちゃんの言葉に集約されていた。
どうも私が「帰る」と言い放って部室を去った後、残った人間たちで色々と私のことについて話をしたらしい。それがこの朝のいっちゃんの言になったわけだが、そういった自分の失態はともかくとして、仲間に気にしてもらっている自分の存在があるのだと変に嬉しかったのだ。
私は自分の考えていることについて、心を許せる人間に聞いて欲しかった。当時信じてはいなかったが、それが私の恋の具体的目標だった。恥ずかしながら私が恋愛に「肉」を求めたのは今の彼女さんが初めてである。自分でも分かっていたが、どうも私の求めているものはプラトニックなものだったようだ。それがいっちゃんの言う「無害」であり物足りなさでもあったのだ。人の過剰な貪欲を嫌っていた私には有り得ないその資質が恋愛に役立ったのはせいぜい中学時代までだろう。そういった意味で私の恋の手法はずっと中学生のままだった(笑)。
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