理系クラスということでクラスの大半が男子ということもあったのだろうが、何故か私の周囲は休み時間になると男子の輪が出来て、正直自分でも不思議だった。ほとんどが2年の頃知り合った隣のクラスの人間たちで、陸上部のNをはじめ、山ちゃんの取り巻きがほとんどだったのだが。遠い未来に再開するNと山ちゃんのエピソードはその時にお話しするとして、ここでは写真部のアイツについて話そうと思う。
仮にヤツの名をミルとでもしておこうか。彼と初めて交わした会話は今でも覚えており、あまり大きな声ではいえないが、それはそれは子供じみたものだった。 「ねえ、そこ僕の席だからちょっとどいてくんない?」 「...」反応がないのでもう一回同じ事を言うと 「やだよ」「ここがあんたの席だっていうけどこれは公共物だ」 そう言われればそうだな、とか思う私はかなりお人好し(笑)。なんか馬鹿らしい言い争いになる予感がしたので私はそれで切り上げたのだが、この時は特に不愉快でもなかったのだ。それは彼の冷めた物言いに自分に共通するものを見たからなのか、その辺は自分でも分からない。 ミルはどちらかと言えばそれまでクラスで目立たない存在で私も名前すら知らなかったのだが、あのやり取り以降、私たちはなぜかよく話をするようになった。卒業アルバム委員となった私は彼の写真がかなりの腕前だと言うことも知っていたこともあって、写真の心得のある彼にクラスの写真を行事の際は取って欲しい旨をお願いした。最初は渋っていた彼もそのうちやる気になって、春の演劇発表の準備からかなりの枚数を撮ってもらったのだ。
私が部外者で文芸部へ連れて行った人間は後にも先にも彼一人である。2年の頃にクラスで浮いていた自分と同じ境遇にいるミルを一人にする気にはならなかったのだ。
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