それから1時間ほどだろうか、私は一人で黙々とシュートをしていた。ただそこには相手がいなかった。いつもそうだ。結局自分は人と相対する状況から逃げているだけだ。いくら理屈をこねくり回してもそれは自分が良く分かっていることだ。世の中は何もかもが自分に都合の良い人間関係があるわけではない。その事実に押された私は中学を卒業後、自分から高い壁を作ってしまったのだ。当時の自分はそれに気づく訳もなく面倒であろうと推測できる人間に近づかないようになった。
何をやっていても面白くなかった日々。その後嶋さんから届いた手紙の返事も書けずにうつむいていた自分にとって率直に感じた楽しみが、体育でやったバスケットだった。この時かもしれない。下手は下手なりに体を動かすことが好きならいいんじゃないか、と思ったのは。そして自分の居場所を学び舎である中学の体育館に求めたわけだ。
楽しかった。素直にそう思った。ただ何気ない先生の言葉だけ余計だった。
「高校は中学とは違うからな」
こんな冷め切った説得力のない言葉がいわば恩師である先生の口から出るとは思わなかった。いや、それが「大人になる」ということなら自分は子供のままで結構だと本気で思った。
まあどういった形であれ、過去の温室に別れを告げることのできた日であったことに変わりはなかったが。
この頃だったか、太宰治の『グッドバイ』を読んでいたことは全く今日の日記に関係はありません(笑)。
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