あお日記

2002年08月13日(火) 不実行


 公演は夕方には終わっていたはずで、その後のことは正直なところはっきりと覚えていません。食事をしたかもしれないし、そのまま帰ったかもしれない。ただ、電車の中では言葉を交わさなかったことは覚えている。

 地元に近くなるにつれて幾分冷静になってきたのか、あたりがかなり冷えていることに気が付いた。まあ3月下旬といっても春はまだ先な気配。最後の乗換駅で私は販売機でコーヒーを2本買った。「あったかいよ」と言ったかどうかは分からないが、初めて彼女に向かって笑みがこぼれたのがこの時だったと思う。それから程無くして電車が来たため、話をする機会が中断されてしまったのが残念でならない。

 私の地元は終点なので、近づくにつれて乗客も減っていく。彼女と会ってからというもの、私にとって彼女以外の全ての人間が邪魔だった。明らかに私は目の前の女性を理解したい衝動が深まっており、外野が邪魔だった。またそんな自分がこの体の中にいたことに動揺もしていた。周囲の人影が少なくなるにつれて自然と私の口数は多くなっていたのかもしれない。まあたかが知れてるが(笑)。

 地元の駅に着いた時が私の口数のピークだった(笑)。あの時の胸ポケットの手紙は今現在でも私の手元に残っている。缶コーヒーを嶋さんに渡して笑みを浮かべた時点で私はこの日の目的をあきらめたようだ。自分の中にある素直な衝動と、決心したことを実行できない自分の行動力の無さに厭世的でもあり、かなり複雑な心境で家路に着いた。

 「また手紙で」と言った嶋さんから私は、彼女がかぶっていた帽子をもらった。それに込められた彼女の意思は、今現在においても、わからないままである。




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