残暑はなかなか結構ひりりひりりと暑い
NNのおっさん2人の妄想とか自分の日々とか色々書いてます

1999年01月14日(木) ベタネタですが

目の前で繰り広げられる、くだらない言い争い。
応酬がエスカレートしていく中、俺だけが冷静にそれを眺めていた。
もう何分も二人の主張を聞いてやる形になっている。
話を聞いているのは俺なのに、二人とも気持ちはそれぞれ相手に向いている。
内心で「勝手にせえよ、もう」と思う。
仕事とは言え、やはりなんとも言えないモヤモヤが湧いてくる。


ああ、この感じ。
これはあの時ととても似ている。
10年以上前は、こんなことがよくあった。それと同じだ。

「本当におっかしいんだよ、この人」

笑いながら俺に話すのは、オーイヅミ君。
俺自身はそこまで彼の事をよく知らない。
「この人はさぁ…」の、話題の張本人の事は
悪いけど俺の方がよく知っている。うん。

「なんやねん、よお言うわ!!」

負けじと言い返すおかむらさんの目は、それはもうキラキラ生き生きしている。

そう、これよこれ。
仕事と趣味と、俺に向けられる以外で見るこの目。
全部が楽しくて仕方が無い、
次になにをされるか、自分もどうしてやろうかと
純粋にワクワクしている目。
そしてそんな様子を目の前で見せられるなんて、本当に久しぶりで。
おかむらさんの事を独占したいなんていう気持ちは
もっと若いときにはあったけど、もう大人やし信頼もあるしで最近は動じなくなっていた。
でも、ここまで生き生きな彼を見ると、ちょっとドキっとしてしまう。


「なんか自信なくなるわー…」
収録が終わり、楽屋へ戻る。
オーイヅミ君とおかむらさんの物凄いエネルギーと個人的な感情から、どっと疲れが出る。

昔は、どうだったろう。
こういう場面はよくあった。
その時、自分はどうしてたんだろうか。

「あかん、もう思い出せんわ…」

感情のコントロールが出来るようになって平穏な日々が長く続いていた。
意識してなかったけど、おかむらさんの事は自分のものだとか思ってたんだろうか。

「思い上がってたんかなぁ…反省しよ」

自分を諌めたものの、やはりおかむらさんを取られたような気になって。

「でも俺のもんやっちゅーねん」

ぶつぶつ言いながら楽屋を出た。




駐車場に下りるエレベーターを待っていると
タイミングの悪いことにオーイヅミ君とおかむらさんが肩を並べてやってきた。

「お疲れ様です」
「おつかれー」
「やべさん聞いてくださいよ、またこのちっさいおっさんがぁ」
「それはオーイヅミ君が悪いんやろー」

スタジオと変わらぬ勢いでまた話し始める二人に
「まだやってんのー」と笑うしか出来ない自分。
もう大分ダメージ受けたのに、とどめを刺す気かと思いながら
こんな嫉妬心を丸出しにするわけにもいかず、適当に合わせながら仲良く駐車場へ下りていく。

「僕タクシーですから。覚えとけよーちっさいおっさん!!」
「おーおーそれはこっちの台詞じゃぁ!!」
と、最後の最後まで言い合ってタクシーに乗りこんだオーイヅミ君を見送ってから
「じゃ、僕もあっちやから」
とおかむらさんに背を向けた。

「おー、お疲れ〜」

いつもと同じ別れ際なのに
オーイヅミ君とのやりとりが激しかっただけに
おかむらさんのこの一言がとても淡白に感じて、あー俺にはこれだけか、と益々ヘコんでしまった。

「あっ!!」

突然おかむらさんの声が鉄筋コンクリートの駐車場に響いた。
思わず振り向くと
「車のキーがない!!!」
とカバンを必死に探っている。

「何してんすか、ポケットは?」
「ポケットにもない…どーしよ…」
「思い当たるとこないの?」
「全然分からん…帰られへんやん」
「楽屋戻ってみたら?」
「えー…でもなぁ…楽屋行ってもなぁ…」

なに渋ってんねん…と言おうとしたとき、チャリ…と明らかに鍵の音がおかむらさんのポケットから聞こえた。

「あるやん鍵ィ!」

そういうと、へへへと誤魔化すような顔でおかむらさんが笑った。

「何しょーもないウソついてんねん」
「ばれた?」
「ばれたやあらへん」

突然くだらなくなって、自分の車へ向かおうとすると。

「待って、一緒に帰ろうや」

とおかむらさんが付いてきた。

「一緒にて、お前も車やのにどうせバラバラやん」
「じゃぁ俺がお前の車に乗って、お前の家に帰ろ」
「なんでやねん」

めちゃめちゃな言い分に噴出してしまう。
そんな事を言っているととうとう車に着いてしまった。

「なに勝手に乗り込んでんの、あんたぁ」
「ええやん」

俺の気持ちも知らんくせに楽しそうに笑うおかむらさんに少し腹が立って
エンジンもかけずにハンドルに凭れて横目でにらんだ。


「なんやの」
「なにカリカリしてんの」
「あんたがめちゃくちゃ言うて車乗ってくるからや」
「その前からやん」
「あんなぁ……あんたらが煩ぁて疲れたの」


それだけじゃないと、もしかしてバレていたんだろうか。
そう言ってもおかむらさんは俺から目を逸らさなかった。
じっと見るまっすぐな目に圧されて、観念して口を開く。

「…ほんまは…あんたがあんまり楽しそうやから、やきもちやいたの」

顔を見られたくなくて、おかむらさんを抱き寄せた。
おかむらさんも俺の背に手を回して、大人しく抱かれてくれている。

「ほんでなんか…自信なくなっただけやねん。そんだけ」
「そおか」

背中をあやすようにぽんぽんと叩かれて、子供みたいやな…と自分が可笑しくなって笑う。

「俺、まだまだやわー…もう落ち着いたと思ったけどアカンわ」
「どういうこと?」
「おかむらさんには弱いみたい」

素直に白状すると、おかむらさんは「そおか」ともう一度言って
抱きしめる手に力をこめた。
そして、「自信、ずっと持っててよ」と耳元で囁いて
俺が頷くのを確認すると、そっと頭にキスをくれた。







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Oいずみ氏と丘むらさんの絡みがあまりに激しかった記念。
でも決してやべしにヤキモチ焼かせる為に激しい絡みを見せたんだ!
というあれなわけじゃなく、純粋に萌えました。
O氏と丘氏の話も書いてみたい…がO氏を知らなすぎて
妄想が現実以上に広がらない状態です。







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油木かい [MAIL]