コタツに二人で入って、少し酒を飲む。 次の日がオフのときの小さな楽しみになっている。
深夜放送で流れてる映画をかけながら、 なんとないことをぽつぽつと話している。 さっきから、岡村は自分の足先で矢部の足をつつきながら 煙草を吸っている。
「なぁ、なんか嬉しい事でもあったん」 矢部が問うと 「なんで?」 気にする様子もなく返す。 「なんでって、さっきからなんかエエ顔してるで」 「えっ、そおか?」 言われて気づいたのか、慌てて矢部の方を見る。 「うん、ずうっとなってたで」 つついていた足を止め、落ち着き無く胡坐をかいて座りなおす。 「別になんもないんやけどなぁ…」 煙草を灰皿に置いて、気の無いフリをする。
「なぁ」
矢部がコタツから抜けて、岡村の背後に回る。 そのまま岡村を抱き込むような形で腰をおろした。
「なっ…なんやねん急に」 「えーやん、あったかいで」 「酔うとんか」
そう言いつつも体重は矢部に預けている。 矢部は矢部で、小さい割にしっかりとした岡村の背中に安心感を感じていた。
「酔うてますよ、僕」
矢部は岡村の腹にまわした手を引き寄せて、首筋に鼻を埋める。
「酔うたらくっつきたなるんです」 「酒入ってんくても来るやんけ」 「そーでしたっけ」
知らぬフリで笑う矢部に、しゃーない奴やで、と呟くと 岡村は左腕を上げて矢部の頭に手を伸ばした。 そっと触れて、宥めるように髪を撫でてやる。
抱きしめているのは自分なのに、 岡村に甘えている格好になっていることに少し照れながら 矢部は酔っていることを言い訳に、されるがままになっている。
岡村が手を下ろすと、待ち伏せていたかのように手のひらを捕まえて 岡村の指を玩ぶ。
絡めたり、離したり、握ったりしながら、その存在を確かめる。 岡村も無意識にだろうか、同じように握り返してくる。
「おかむらさん」
矢部の口から、思わず甘えた声がでる。
「んー」
ぴったりくっついている身体から、声が伝わってくる。
「なあんもないです」 矢部は楽しそうにくつくつ笑うと、耳にキスをひとつ落とし
「朝までこうしてましょか」
と冗談めかして言った。
岡村は俯いて、それもえーかも、と真面目に答えると ほぅ、と溜息をついて目を閉じた。 丁度矢部が、頭に口付けたところだ。 コタツに突っ込んだ両足がやたら熱くて、 岡村は小さく身じろいだ。
************************* もう暖かい季節ですが 物置にしまう前にコタツネタ
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