空気が澄んでいる。 寒い寒い日の夜中の話。
「東京でも冬はよう星見えるな」
腕を組んだまま肩を竦めて、岡村が呟く。 肉まんが食べたいからコンビニに行こう、と言い出したのは岡村の方だったが 正直ここまで寒いとは思っていなかった。
「見えますねー」
部屋を一歩でただけなのに、一気に身体が冷えていく。
「にしても寒いっすねー」
矢部もダウンジャケットのポケットに手を突っ込んで白い息を吐く。
「やっぱコンビニやめとこか」 「えーやめんのー?」
あまりの寒さに行く気が失せたのか、岡村は玄関先から一歩も動かない。
「行きましょうよ、ほら。散歩散歩」
矢部が促すが、岡村は「うーーーん」と唸ったままである。
「あんたが行こうって言うたんでしょ?」 「でもそこまでして行かんでもええかなあってさぁ、なるやん?」 「なるやん?って、肉まん食べたいんでしょ?」 「食べたいけどやぁ、ハイリスクやで」
うだうだ言って動かないほうが、よほど冷える。 矢部はしゃーないなぁと言って、岡村を抱き込んだ。
「ちょっと間あっためたるから、行こ」
頬に当たった岡村の耳は氷の様に冷たくて。 夜中のマンションの玄関先で、仮にも電波に身を置く二人が あからさまに抱き合うなんて危険すぎるのだが 構わず更に強く矢部は抱きしめた。
「お前意外と大胆やな」
笑った岡村の頬は、部屋にいた時よりもあたたかそうな色をしていた。
****************** 「寒い」「ぎゅっとする」が 前の話とモロ被りです。申し訳、ない。 丘村さんはぎゅっとするかちゅーすればおとなしくなる説。 じょゆーえろがっぱ説と同レベルの説を私は声高に唱えます。
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