パンドラの箱
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2005年12月13日(火) 満月の夜。



「キレイな満月ね」



彼女の視線を追うと確かにそこには満月があった。



「ほんとだな。月見にふさわしい満月だ」



「よかった」



俺の返事を聞いて彼女が嬉しそうにほほ笑んだ。



「よかったって何が?」



「キレイなものを見て、キレイだ、と感じることができるのは実はとても大事な,
ことなのよ。心にゆとりがないとそんな風には思えないし、そもそも、
きれいなモノに気付かないでしょう?」



最近仕事が忙しい。こうして彼女とゆっくり会うのは久しぶりだ。

甘えん坊で、寂しがり屋の彼女のことだ、きっと我慢してたに違いない。

今日だって、たまたま仕事が早く終わったから会えたのだが、疲れているせいか、
こうして久しぶりに彼女と会っているのに、不機嫌な顔をしている俺を見て、
きっと不安になったのに違いない。

自分のことで精一杯で彼女を構ってやれなかった自分を恥じた。





「ごめんな」



俺は謝ると彼女の肩を抱いた。

俺の肩にもたれかかりながら彼女は静かに月を見ていた。

彼女の横顔が月の光に照らされている。



「キレイね」



「ああ。キレイだね」














こはる |MAIL

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