パンドラの箱
DiaryINDEX|past|will
タカオとのセックスは気持ちいい。あたしは彼とセックスするといつだっていける。
タカオとのセックスは何にも考えなくても感じる。
タカオも
「おまえとのセックスは最高だ」
と言ってくれてる。
タカオとのセックスはお互いがどこまでも貪欲で、執拗で、容赦ない。
あたしはタカオのこと以外は考えられなくなるし、他にはもう、何もいらないって思う。
タカオとは何でも話せる。仕事の話も、友達とのいざこざも、昨日見た映画の話も、くだらないテレビのバラエティの話も、タカオとならいくら話していてもあきない。
話したくない時は話さなくても全然苦痛じゃない。
誰かといるときに沈黙が続くのはとても苦痛になることもあるが、タカオとはただ一緒にいるだけでいい。
タカオとは長い付き合いだけど、お互いに彼氏とか彼女とは思っていない。
人からは
「あんた達付き合ってるんでしょ?」
と言われるが、あたしもタカオもお互いを縛ろうとは思わないし、会いたい時に会って、寝たいときに寝る、そう言う関係でいいと思ってる。
タカオのことはとても好きだし、タカオでなければダメだ、と思うこともあるけど、だからといって、タカオが仕事でずっと会えなくても、忙しくて連絡が付かなくても、それはそれで構わない。
その日、あたしは仕事がうまくいかなくてイライラしていた。
タカオに会いたい。タカオの携帯に電話をかけた。
「もしもし?だれ?」
驚いたことに女が出た。
「タカオは?」
「今寝てる」
ちょっぴり意地悪そうに答えると女は電話を切った。
胸が痛んだ。
タカオはもてるし、特定の彼女は作らないから、いつだっていろんな女と付き合っているのは知っている。
「この間の女、参ったよ」
なんて、あたしとのセックスの最中に話し始めることもある。
そんな時あたしはなぜかほんの少しの優越感を感じながら、タカオの体をむさぼるように求め、いきつくのだ。
次の日、タカオから電話があった。
「夕べごめんな。すげえ疲れてて気絶してた」
「ううん。ジャマしちゃったみたいでごめん」
「ん?ああ。彼女のこと?」
あたしはまた胸が痛んだ。
「俺さ、ほんっとに疲れてて玄関のカギあけっぱだったらしいんだわ。勝手に部屋にはいって来てたから、朝目が覚めて超ビビった」
「何にもしなかったの?」
「してねえよ。朝までぐっすり寝てたし、勝手に部屋に入ってくるような女は嫌いだ」
あたしはタカオの言葉を聞いてほっとした。
何でほっとするんだろう。
「そんなことより、なんかあったのか?」
「ううん。大丈夫。・・・でも、会いたいな」
その日の夜、あたしはタカオと2人でたらふく食べ、浴びるほど飲み、いやなこと全てを忘れるくらい楽しかった。
「タカオ、したいよ」
ホテルに行き、部屋に入ると服を脱ぐのももどかしく、ベッドに転がり込んだ。
あたしの頭の中は真っ白になり、あたしは何度も何度も達していた。
「おまえ、今日、おかしいよ」
終わった後、タカオはあたしの髪をなでながら言った。
「そうかな?酔ってるからいつもより激しかったかもしれないけど・・・」
「そう言うんじゃなく」
言いながらタカオの手が首筋に触れ、それだけでまたあたしは欲情し、タカオに覆い被さった。
「あたしはタカオが好き」
「なんだよ。急に」
「タカオとのセックスは最高なの」
「俺もおまえとのセックスは最高だよ」
「タカオ以外何にも要らない」
言いながらタカオにキスしようとした。タカオの手があたしを捉え、あたしは動きを止められた。
「俺は俺だけのもので誰のものでもない。誰のものにもなりはしないよ」
あたしの目から涙がこぼれた。
そう、あたしはタカオのことを愛していた。誰にも渡したくない、そう思った。
「俺はおまえのことは大好きだ。セックスしても、しなくても、おまえのことは大好きだ。だけど、俺は俺だ。おまえのことが好きなのと、おまえのモノになると言うのは違う。束縛しなければ成り立たないような関係なら、もう終わりにしよう」
タカオの口から出た言葉にあたしはどうしていいかわからないほどの悲しみに襲われた。
「あたしはタカオが好き。誰にも渡したくないの。そう思うことはいけないことなの?」
「束縛しなくても、俺はいつだっておまえのことを大事に思ってる。おまえが誰か他の男に抱かれていても、そのことと、俺とは関係ない。俺に向き合うおまえが俺にとっては全てだし、それでいいんじゃないのか?」
タカオはタカオだ。そんなタカオがあたしは好きなんだ。
だけどこの独占欲は一体どうしたらいいのだろう。
「俺はおまえのこと縛るつもりはない。おまえがどこで何をしていようと、それがおまえなら、俺は全てを受け入れるよ」
あたしはやり場のない思いを抱えたまま、タカオの唇をふさぎ、どうしようもないほど欲情し、あとは何も考えずに、タカオの体をむさぼり続けた。
|