Spilt Pieces
2011年01月21日(金)  光と影
大企業で働いたことのない私は、どことなく憧れを持っている。
それが幻想であることは、分かっていたつもりだけど。

先輩の旦那さんの同僚が、亡くなったと聞いた。
心筋梗塞だと。

まだ三十代。
一流企業で、働き盛り。
奥さんと二人の子どもを連れての海外赴任。
このご時勢にあって、人もうらやむような境遇。
に、思える。

昨日、先輩の旦那さんは、葬儀へ行った。
「その年でなぜ?」と、いぶかしく思いつつの参加だったという。
多くの人が泣く中、葬儀は終わりかけていた。

亡くなったその方の、お父さんが最後の挨拶に立ち。
呆然とした様子のまま、ポツリポツリと話し始めたとのこと。
「息子の日記を見つけました。遺書がありました」

その瞬間まで、ほとんどの人が心筋梗塞だと思っていたそうだ。
実際は、心を病んでの自殺。
けれど一流企業と呼ばれるその会社において真相を公表しないのは、よくあるのだと。
先輩が、旦那さんから聞いたと、怒り交じりの悲しげな表情で言った。

私ね。
その方も、奥さんも、知っているの。
家族ぐるみで食事に行ったこともある。
2人の子どもを連れて行ったと言ったけど…
1人はまだ2歳にならなくて、もう1人はおなかの中にいるんだって。
7ヶ月。
奥さんの様子は、見るに見られなかったって。
旦那が、ひどく落ち込んでた。

ちょうど前日、その「一流企業」では年間かなりの数の自殺者が出ているという話を聞いたばかりだった。
だけど表には出てこない。
憧れの会社だとか、その会社で働いている人と結婚したいとか。
色々、聞く。
それは、光のイメージだけが刷り込まれている証拠で。
色んなことを「消して」いることの「成果」なわけで。

理由も、原因も、へたしたら誰かがいなくなったことさえ、
「消して」しまえるのかもしれないけれど。
でも、そんな形で最愛の人を失った人は、その激しく苦しく耐え難い感情に、そしてこれからの生活に、どう向き合っていけばいい?
何も消えない。
幸せが消えただけ。
それ以上でも、それ以下でもない。
残ったのは…何?

それでも、
昨日までと同じように、会社は動いていくんだろう。
「個人的な病気」で、倒れた人が、1人。
30代で。
これからたくさん幸せなことがあっただろうに。
子どもの顔も見ずに。
自ら。

悲しくて、やりきれない。
亡くなったその方と、残されたご家族は、
そんなレベルの思いではないけれど。

何が「一流」?
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