Spilt Pieces
2003年04月06日(日)  カルメ焼き
今日、受けようと思っていた企業の筆記試験をすっぽかした。
説明会に出席し、メールでも質問した。
エントリーシートも他より気合いが入っていた。
私にしては珍しく、本気で頑張ろうかなと思っていたところ。
でも、やめた。
何だか、規模で決めているような気がした。
本当にやりたいことなのか、分からない。
高校の頃から思い描いていた夢と、違う方向へと進んでいっている気がする。
要するに、自分の中で決着がつかなかったのだ。
もっと器用になりたいと思うのに。


そういうわけで、今日の予定がなくなってしまった。
皮肉にも他社のエントリーシートを出しに、近くの郵便局へ。
普段なら車で行くけれど、今日は天気もいいので自転車にした。
カメラを鞄に入れて、お花見しながらのんびりサイクリング。
途中、何度も小学生やらお年寄りやらに追い抜かれた。
それくらい、ゆっくり漕いでいた。
久しぶりに太陽の下で暖かい時間を満喫した気がする。


風が強かった。
でも、桜の咲くところはどこも多くの人で賑わっていた。
静かなところで花を見たくなって、普段は人の少ない公園へ。
行ってびっくり。
静かどころか、今日きっとこの街で一番大きなお祭りが開かれていた様子。
自転車を、押して歩く。
見知らぬおばちゃんに話しかけられる。
私も笑って返す。
鳩に餌をやっては騒ぐ小学生。
Niconのカメラを片手に桜と向き合う中年男性。
遠くから眩しそうに孫を見守る老夫婦。
強風にも関わらず、たくさんの人が芝生の上でお弁当を広げて楽しそうだった。


「地元出身です!歌います!」
臨時に設けられたであろう、簡易ステージの上で青年二人が大声をあげた。
曲は、ゆず。
あまり詳しくないので曲名までは分からなかったけれど、春の日によく合う、暖かい雰囲気の曲だった。
椅子に座って歌を聴いていたのは、多くが年配の方。
きっと、普段の生活を送るだけでは接点がないはずの二つの世代。
それが、歌う人と聴く人とで、見事に関係が成立している。
祭りはきっと、こういう繋がりが生まれるから空気が優しい。


ぼんやりと歌を聴いていると、視界に不思議なものが入った。
「カルメ焼き」と書かれた看板。
カルメ焼きやらベッコウ飴やらが売られている。
その奥に、人だかりと大きなお玉。
見ると、カルメ焼きを作る体験ができるとのこと。
ベテランのおじいさんがお玉に入れた砂糖水(秘伝らしい)を火にかけ、沸騰したところで客にバトンタッチ。
客は白い粉(多分膨張剤)を入れ、棒でぐるぐるかき混ぜる。
色が変わってきたあたりで、お玉の底をじゅっと冷たい濡れタオルのところに当てて冷やし、冷えた頃にまた火にかけるとつるりとはがれる。
見ていたら、自分もやってみたくなった。
周りはほとんど親子連れかカップルだったので、女一人で少しくすぐったくもあったけれど、結局好奇心には勝てず、いそいそと並ぶ。


順番が来て、ホイとお玉が渡された。
急いで白い粉を入れて、かき混ぜ開始。
思っていたより短時間で色が変わる。
すぐにおじいさんから「はい、もうあげて」と声をかけられる。
今まで見ていた人たちのと同じように、小さくじゅっと音がした。
むくむくと、おもしろいくらい綺麗に膨らむ。
しばらく見とれていた。
すると後ろのおばちゃん、「お姉さんちょっとどいてちょうだい」
…しまった。


何の変哲もないカルメ焼き。
でも、自分で作ったのは味が違うような気さえする。
既製品と異なり、手にぬくもりが残る。
口の中で、ふわふわ溶けた。


今日、私は試験をすっぽかしてしまったけれど。
それ以上に、大切なものを思い出したような。
就職、就職と言っていると、本来の自分の目的が分からなくなってきてしまう。
「とりあえずどっか入っておけ」
これは、現在の就職難・不況という状況でよく耳にする言葉。
だけど、それでは私はきっと満足しない。
私が望むのは、こういう心地よい時間の流れる街が増えること。
こういう時間が、もっと増えること。
そのために、色んな人としゃべって笑って書いて伝えたい。
規模なんかどうでもいいじゃない。


大切なことを忘れそうになるときは、また自転車に乗って散歩に出かけよう。
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