Spilt Pieces
2002年12月26日(木)  ぶた
私の前を走るトラック、後ろから見て何だか不思議な形をしていた。
横幅が妙に広くて、屋根がない。
ふと曲がり角で、その正体を知る。
所狭しと豚がウロウロ動いていた。
しばし同じ道を走る。
ずっと豚の後ろを走る。
曲がり角に至るたび、豚が動いているのが分かる。


そういう光景を見るたび、私は豚を食べられなくなるような気がする。
以前食事中にそのような話題が出たとき、実際食べられなくなったことがある。
動く豚を想像する。
皿の上の断片となった肉を見ても同じことを想像してしまう。
思わず箸を置いた私は、その日はいくら強制されてももう食べようという気が起こらなかった。
ハンドルを握りながら、そんなことを思い出した。


私が食べようが食べまいが、トラックに乗せられて運ばれていく豚が殺されるということに変わりはないだろう。
一人やそこらで需要に変化など生じるはずもない。
私は特定の宗教を信仰しているわけでもないし、肉を食べることが嫌いなわけでもない。
弄ぶのでなければ、食べることは動物として当たり前のことだと思う。
だから私は食べる。
食べるという目的において、それは罪ではないと思うから。
無駄に悟ったフリをしたところで、私には意味がない。


豚が、殺される場面を私は見たがらない。
豚を殺さなくてはならない人もいる。
でも、それを残酷だと思ってはならない。
自分のことを棚に上げているだけだ。
みなが生きるために、そういう役目を引き受けてくれている人がいるということを思わなくてはならない。
トラックで運ばれていく豚を見ながら、尻尾がかわいいなと思いながら、ふと涙ぐんだところはいつも通る葬祭式場の前だった。
そこで、トラックは右へ、私は直進して分かれた。
ただの偶然なのだろうけれど。


きっと豚は、これから起こる自分の運命を知るまい。
私は、何を思っていけばいいのだろう。
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