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| 2006年03月10日(金) 指切り ニ。 |
| 1日中、幻覚・妄想に支配されて意志疎通ができず、時には暴力を奮う。そんな彼との6ヶ月。 30代の彼は身体も大きくて、暴力を受けたスタッフは目に見える傷を負うことも少なくはなかった。暴力を奮うか奮われないかの違い。それは、対象を「自分とは違うもの」として見るか見ないかだと思っている。それは対象を「障害者」と見るか見ないかということと同じことだ。 逆の立場になってみるとわかる。暴力を奮うのは相手を「自分と違うもの」として見るか見ないか。それは対象を「健常者」と見るか見ないかということと同じこと。 僕は彼の幻覚妄想を否定せず、その妄想に話を合わせながら接し、暴力を奮われそうな時は、決して構えず威嚇せず、平静を保って、暴力そのものを受けるつもりでいた。 やがて彼は僕以外のスタッフを受け付けなくなった。暴言を吐き、暴れそうになるとスタッフは僕を呼び、僕はいつもの姿勢で、興奮している彼の乱れたベットを直したり、衣類をたたんでから、何事もなかったように、「で、どうしたの?」と話し掛ける。すると彼も何事もなかったように、いつものトーンに戻って僕を妄想の世界に、彼自身の世界に招こうとする。僕は身を委ね、その話に何分も何十分も付き合う。 会話は成り立たない。妄想の世界から発せられた言葉は僕たちが理解できるものではない。それでも、その言葉から「怒っている」「喜んでいる」などの気持ちは察することができる。だから怒っていたら沈痛な表情を浮かべ、喜んでいたら一緒に笑う。会話はできなくても、気持ちの共有はできる。それが僕たちの仕事。 |
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