2005年12月25日(日)  いいわけ 十、クリスマス。
 
クリスマスには、もう僕たちは一緒にいないから、彼女は僕たちの最後の夜に、小さなプレゼントを渡した。
 
最後のデートを過ごした最後の夜。彼女は僕の耳元で、子供に聞かせるように、ゆっくりと絵本を読んでくれた。歳は8つ離れているけど、いつまでも僕は彼女の子供だったのだろう。聞き分けがなくてわがままで、「別れよう」突拍子もないことを言う。
 
部屋の蛍光灯は消え、温かな間接照明だけが灯る静かな冬の夜。穏やかに迎える別れなんてあるわけないのに、彼女は精一杯の笑顔を迎えて、穏やかにその時を迎えようとしている。
 
ドーナツが大好物の主人公が、唯一の友達のゾウにも大好物のドーナツを食べさせたいために、いろんな工夫をして、数々の苦労をして、とうとう作ってあげることはできなかったけど、一人しか友達がいなかった主人公は、ゾウは、その過程でいろんな友達を作ることができたという物語。
 
「僕は君と一緒にドーナツを作る過程でできた友達を、あれだね」
「またそういう取り方をする」
 
悲しく笑う彼女は、僕とドーナツを作り遂げることを望んでいたのだろうか。まだ21の彼女。君はまだまだこれからいろんな人と知りあって、いろんな恋愛をして、いろんな想いを提供し、いろんな価値観を強要され、いろんな工夫をして、数々の苦労をして、いつの日か、君と誰かが望むドーナツを作り上げることができる。僕はそう思う。人は間違っていると言うかもしれないけれど、僕はそう思う。僕に留まる理由なんて、実はどこにもない。
 
「惜しいことをしたなぁ」
「何よ、自分から振っといて」
 
これも紛れもない本心である。笑って別れようとする女性と、笑って迎えてくれる女性。僕の頭の中に二人の女性の顔が思い浮かぶ。一人は彼女で、もう一人は好きになってしまった人。二人が浮かべている笑顔は、なぜか同質のものだった。僕はこれからも、その笑顔の違いすらわからずに、ただただ、同じことを繰り返していく。
 

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