2005年12月22日(木)  私の枯葉 第6節。
 
どうしてオバケ屋敷に入ろうと思ったのでしょう。以前、ここに来た時は、彼が強引にオバケ屋敷に入れようとして、私は彼の冗談の強引の百倍の全力でこれを拒んだ。お金払って怖い思いをして馬鹿みたいと思う以前に、ただただ怖かった。小学校の就学旅行の時、みんなの荷物を持って私だけオバケ屋敷の前で待っていたという惨めさを味わったとしても、私は絶対にオバケ屋敷には入りたくない。
 
それにここは東京。入ってない私が言うのもなんだけど、小学生の時は田舎の遊園地だったからオバケ屋敷の程度もたかが知れていただろうけど、ここは花の都、恐怖の都会、コンクリートジャングル、人間模様の蟻地獄。日常生活でさえ恐怖の世界なのに、そんな日常的な恐怖に耐性ができた都会人が演出するオバケ屋敷って、きっと私の想像する恐怖を越えているに違いないわ。
 
どうしてオバケ屋敷に入ろうと思ったのでしょう。オバケ屋敷と書くとあの恐怖が伝わらないような気がする。東京のオバケ屋敷はオバケ屋敷であってオバケ屋敷じゃなかった。様々な人間心理を突いた理詰めの構造によって成り立った恐怖の館だった。って彼が言ってた。私は終始号泣しながら、下を向いて彼の腕にしがみついていた。しがみついてる腕がゾンビの腕だったらどうしよう。彼の顔がいつのまにかガイコツになっていたらどうしようって空想がどんどん膨らんでパニックになった。首を吊った死人たちに囲まれた。首のない人形を抱いた少女に行く手を阻まれた。通路に汚い布で包まれた死体が敷き詰めてあった。って彼が言ってた。私は何もわからない何も見てない何も憶えていない。
 
どうしてオバケ屋敷に入ろうと思ったのでしょう。彼の腕に強くしがみついていたかったからなのでしょうか。本当は、本当に、私はオバケ屋敷になんて入りたくなかった。彼とこのまま一緒にいられるのなら、一生オバケ屋敷に入ることはなかったと思う。私は、暗闇と静寂の恐怖に委ねて、許される場所で、ただ大声で泣きたかっただけなのです。
 

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