2005年12月21日(水)  いいわけ 九、喜劇。
 
「オバケ屋敷行こっ」
彼女とオバケ屋敷に入るのも、これが最初で最後。涙を流して頑なに入ろうとしなかったオバケ屋敷に、自ら誘っている。
「大人2枚」
2枚分のチケットを買い、彼女の手を引いて季節外れのオバケ屋敷の入口に立つ。
 
「やっぱさっきの嘘。入んない」
「だって自分から入ろうって言ったじゃないか」
「そんなこと私言ってない」
もう彼女の瞳には涙が浮いている。
 
この日記を書いている今、もう僕の横には彼女はいない。どうしてあの時、世の中で一番苦手なオバケ屋敷に自ら誘った理由を聞くことはできない。
 
「じゃあこのオバケ屋敷のルートの説明をしまーす」
受け付けのお兄さんが、オバケ屋敷の雰囲気に似つかわしくない声で陽気に話し始める。彼女はもう話など聞く耳を持っていない。受け付けのお兄さんそのものにまで恐怖の視線を投げ掛け、僕にしがみついてぶるぶる震え続けている。僕は彼女の肩を抱きながら、「大丈夫、大丈夫だから」と言い続ける。
 
彼女を最後に守る場所が、オバケ屋敷だなんて、喜劇にもならない。
 

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