2005年12月20日(火)  いいわけ 八、優しい手。

最後のデートは、東京ドーム横、ラクーアというアミューズメントパーク。昔、後楽園遊園地と呼ばれていた場所だ。
 
僕と彼女は、度々ここに遊びに行った。遊園地が好きというわけではない。ここはショッピングモールビルも併設されており、二人で買い物をして、帰りにジェットコースターに乗ったり、観覧車に乗ったりした。僕たちの思い出の場所の一つになることは間違いない。
 
「ねぇ、指輪買って」
彼女は僕の腕に絡まりながら上目遣いで話し掛ける。

「いいよ」
彼女が物をねだるのは、これが最初で最後なのだろう。別れの記念。そんな記念は存在するのだろうか。別れを象徴する物。人はそんな物を希求できるのだろうか。
 
毎年3月14日、僕たちの記念日に、ここのアクセサリーショップでペアリングを買った。今僕たちの左手の薬指にはめている指輪は2つ目の指輪。3回目の3月14日は訪れることはなく、3つ目の指輪は、ペアリングではなく、彼女がこれから辛さと悲しさと寂しさを背負っていくだけの、小さな小さな青いブルーダイヤが施された指輪。
 
「今つける?」
「いやよ。だってまだ恋人同士なんだもの」
 
彼女は新しいリングが入った袋を、お腹を撫でる妊婦のように優しく撫でた。
 

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