2005年12月17日(土)  いいわけ 六、恋人の定義。
 
「恋人って何をしちゃいけないの?」
暗いベッドの中で彼女は呟いた。こんなに近くにいるのに、彼女は天井を向いているのか、声が少し遠く感じられた。
 
「まず、手を繋いだら駄目だろう」
そう言い終わらないうちに彼女は僕の手を強く握る。
「あとキスをしちゃいけない」
そう言い終わらないうちに彼女は僕の頬に唇を寄せる。胸が痛む。こんなに純粋で、こんなに愛らしいのに。
 
「もちろんエッチも駄目だ」
彼女は僕の手を握ったまま、僕の頬に唇を寄せたまま、大きな溜息を吐く。そんなことじゃない。溜息にはそんな彼女の思いが込められているような気がした。陳腐な説明は、故意に逃避しているだけ。僕はこれからどこだかわからない場所へ精一杯走って、彼女との距離を広げなければいけない。
 
「私にとっての恋人はね、安らげる場所なの。何をしても許される場所なの。あなたは無意識にそういう場所を作ってくれて……」
彼女は暗闇で小さく息を吸った。
「謝りながら自分で壊してるの。私はただ呆然とそれを見てるだけ」
 
おやすみも言わないまま、彼女は眠りに落ちた。ただ呆然と、愕然と、悲観に暮れながら、僕の手を握り、唇を頬に寄せ、静かに眠りに落ちた。足を絡めて眠るのは、僕の癖だったのか彼女の癖だったのか、今はもうわからない。僕たちはいつもこうやって一つだった。
 

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