2005年12月16日(金)  いいわけ 五、闇の中。

「じゃんけんで3回負けたほうからシャワーを浴びる」
 
いつものくだらないゲーム。そしていつものくだらないゲームに必ず負ける僕。そして何かと言い訳をつけてシャワーを浴びようとしない僕。その僕に罵声を浴びせる彼女。その彼女を強く抱きしめて耳元で愛の言葉を囁く僕。愛の言葉を受け止めて胸の中で咀嚼した後、再び僕を突き放してシャワーを強要する彼女。あともう一回だけじゃんけんとルールの変更を要請する僕。その要請を甘受する彼女。そして必ず負ける僕。
 
それはいつもの光景、僕と彼女との恋愛を思い返すときにさえ、思い浮かんでこないようななんでもない風景。そんな些細な一つ一つのことが、いとおしく、かけがえのないものに感じる。今日という夜は、もう訪れることはない。そんなことわかっているんだけど、そこに彼女がいる今日という夜は、もう訪れることはない。そんなことが、わからないでいる。
 
暖房が入り、ハロゲンヒーターが灯り、コンポから音楽が流れ、パソコンでニュースを読んでいた時に彼女がシャワーを浴びて、ドライヤーを作動させた瞬間、ブレーカーが落ち、真暗闇に包まれる。
 
「ハハハッ」
「ハハハッ」
 
闇の中で二人で笑う。闇の中で相手を探し、闇の中で唇を探す。
 
全てが闇の中だったら、全てが二人だけの世界だったら、きっと僕たちはずっと僕たちは幸せだったと思う。いつもの光景は、些細な風景は、あまりにも光に満ち溢れていた。
 
闇の中で、光を求めようとしない二人は、いつまでも相手の唇にしがみついていた。僕の頬に、君の頬に、何かが伝った。
 

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