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| 2005年12月15日(木) いいわけ 四、最後の晩餐。 |
| 「今、池袋」 彼女からのメール。あと10分もすれば、僕が住む駅に彼女がやってくる。僕はどんな顔をして彼女を迎えればいいのだろう。改札のそばで5本目のタバコを吸い終えたときに、彼女は現れた。いつもの笑顔で、人ごみの中で母親を見つけたような子供のように手を広げて駆け寄って、僕の腕にしがみついた。 彼女は、僕が電話で何度も言った話を確認するためだけに東京にやってきた。僕が答えを覆さないことは、きっと彼女だって理解している。でも僕はそんな理解している彼女の心境を理解することができない。君はどれだけ辛いのだろう。どれだけ苦しいのだろう。 「最後の晩餐だね」 最後の晩餐にはあまりにも似つかわしくない居酒屋で、二人焼酎を飲みながら僕たちの二年半の歴史を振り返る。それが別れという意味さえ持たなければ、幸福に満ち満ちた会話になっただろう。しかし、死にゆく人が走馬灯のように過去を想起するのに似た会話は、少しずつ悲しみを帯びてきて、もう少しでこの関係が終わってしまうという恐怖を呼び覚ます。 その恐怖は、僕の部屋に帰るまで僕の腕を片時も離すことのない彼女の細い腕の力が、小さな震えが、物語っていた。 |
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