2005年12月12日(月)  いいわけ 二、未練と反省、空虚な後悔。
 
「電話だけじゃ納得できない」
四国に住む彼女は何度もそう言った。
 
「会って話しても結論は変わらないよ」
真実から逃避したい僕は何度もそう言った。
 
好きな人ができた。好きな人がいる。好きになってしまった。好かれてしまった。好きなのかもしれない。好きになるのかもしれない。好きだと思う。好きなような気がする。好きに似たような感じだと思う。
 
彼女と話す度に、別れの決意が崩れていく。彼女が鼻をすする度、背徳の所業が胸を刺す。好きな人ができた、はず。もはや何の意味も持たない説得は、彼女の涙の懇願を、正当な主張を、より鮮明とさせる。悪いのは君じゃない。全て僕が悪いんだ。当たり前の事をうわごとのように呟き続ける僕の声は、彼女の耳に入ることはない。
 
「来週、そっちに行くから。ちゃんと話して。ちゃんと私を納得させて」
 
僕は君を納得させることなんてできない。好きになった人を、本当に好きにならない限り、僕は君を突き放すことなんてできない。
 
でも僕は、彼女と別れることを決めた。彼女と過ごした生活が、おそらく本当の幸福だったのだろう。彼女の笑顔は、本当に心から湧き出たものだったのだろう。その幸福を、あの笑顔を、自らの手で断つことに何の意味があるのだろうか。
 
きっとこれから永遠に自問の日々は続くだろう。いつも問い掛けて考えて、きっとこれから永遠に自答する日は来ないだろう。僕はいつも後悔しながら生きている。指をくわえて後ろを振り向きながら生きている。前の彼女のことを考えて胸を痛めたりする。前の前の彼女のことを思い浮かべて涙を流したりする。初めての彼女のことを考えて苦しくなったりする。未練でも反省でもない、それは何の意味も持たない、ただの空虚な後悔を、不治の病の症状のように、慢性的に抱えて生きている。
 
「あなたはそういうことをこれから一生繰り返すのよ」
 
彼女は憐れな子供をいたわるように、溜息混じりに呟く。一生繰り返す。僕のことを、僕より理解した人がそう言うのだから間違いないのかもしれない。一生繰り返す。僕は一生無意味に後ろを振り向いて生きていく。
 

-->
翌日 / 目次 / 先日