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| 2005年08月08日(月) パンがなければ。お米がなければ。 |
| 彼女に「モウヤメテ!」と、涙ながらに止められているのだが、とうとう筋肉トレーニングが日常生活の一部にまで浸透してしまった僕は、今夜も腕立て数百回、腹筋数百回、あとダンベルとか名前がよくわからないでっかい洗濯バサミみたいなやつを強く握って握力を鍛える道具を使って汗を流し、鏡の前でマッスルポーズ。うーん。まだ腹の肉が軽くヤバイ。と、この心理過程は、拒食症のそれと一緒で、いわゆるボディイメージの障害。 拒食症の人は、痩せているのにも関わらず、まだまだ痩せなければいけないと、強迫的な思考回路に陥るのだが、僕もまだまだ腹を引っ込めなくてはならないと、別に腹の肉が出ているわけではなく、むしろ腹筋はうっすらと割れ始めているというのに、腹が、腹が、彼女に、彼女に、嫌われる前に、これを、腹を、あぁ、軽くヤバイ。ふんぬふんぬ。あと100回。なんて具合に病的な思考回路自体を楽しんでいる風があり、別に悪いことをしてるんじゃないからいいじゃないか何回腹筋したって。と、心は意外に晴れ晴れとしている。 そしてトレーニング後に欠かせないのがプロテインである。楽天市場で買ったやつ。ばかでかい袋に入っている3キロの重量のプロテイン。この何の思慮分別もないでかさが、世の中に筋肉以外必要ないとでも言っているようで辟易するが、それを毎日付属されている軽量スプーンで2杯、牛乳に混ぜて飲む。これがまたマズイ。こんな飲みやすいプロテインなんて初めて。デザート代わりに飲めます。なんて阿呆みたいなことが書いてあるが、飲みにくいったらありゃしない。だいいち牛乳にあまり溶けない。ミルメークのようにコップの底にいつまでも固まっている。 ミルメーク。懐かしいな。うちの小学校では毎週土曜日は給食がなくて牛乳だけが出ていたのだが、牛乳と一緒にミルメークが出ていた。あれはうまかった。なんて画期的な代物なんだろうと感動さえしていた。だが時は経ち、今じゃ雑誌のカヴァーじゃなくて、雑誌の巻末に短編小説を連載するようになったというのに、コップの底に沈殿したプロテインをどうやって飲もうかと四苦八苦している。 そこで僕は考えた。牛乳に溶けないのだったら直接この粉末を口の中に入れ、牛乳で流し込もうではないかと。パンがなければケーキを食べればいいじゃないかと。米がなければお餅を食べればいいじゃないかと。 こんなもの直接口に入れて大丈夫なものかと、毒々しい色をした粉末のプロテインを眺めしばし葛藤した後、思い切って口の中に入れてゴブホッ。飴食い競争で小麦粉が気管に入ったような咳をして、周囲に粉末をぶちまけた後、一気に牛乳を流し込んでやはり溶けない。口腔内のプロテインは牛乳に反応して急速に膨張を始め気管を圧迫。このままでは死んでしまう。窒息死してしまうと、止めどなく膨張し続けるプロテインは突然、高熱を発して口腔内で大爆発。煙の中から姿を表した僕の体は筋肉隆々になっていたという夢を見た。 |
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