![]()
| 2005年04月01日(金) 優しさ残酷紙一重。 |
| 僕は自分の買い物をするよりも、彼女の買い物に付き合う方が好きというか、彼女が選ぶ服にいちいち難癖つけるのが好きなのであって、「これどう?」「どうもこうもねぇよ。ツギハギのボンタンアメじゃねぇか」と、意味不明の言葉で罵倒するのが快感で、今日もその快感を味わう為にやって来ましたショッピングモール。 彼女が好きなブランドのショップで、服を選びながら「これどう?」「これ可愛いよね」と訊ねてくる彼女に、ツギハギのボンタンアメだの、ガラクタのモンガイカンだの、思いついた言葉で罵倒する僕に対して彼女はめげることなく、「うーん、じゃあこれなんてどう?」「これってあなた好みって感じがするんだけど」と、訊ねてくる彼女に対して、やはりチャンチキのスッテンテンだのコテコテのミノモンタだの荒唐無稽の文句を並べていると、次第に彼女は涙ぐんできて、それでも「……じゃあこれは? 色がすごく綺麗よね」「……これって値段の割に凝った作りだよね」などと店に入った始めの活気こそはなくなってきたものの、それでも僕が真摯に服の評価をしてくれる日を夢見て根気強く訊ねてくる。僕もそこまで悪魔ではないので、「ちょっと、色がね」「デザインが、あれだね」と、徐々に人間的な評価をするようになってくる。 そうして彼女の服を数点選出し、試着室へ入り、カーテンをはさんで「お客様、よろしいでしょうか」などと店員の振りして彼女に話し掛けているものだから、他の客も僕を店員と勘違いして、「これ試着していいですか」なんて話し掛けてくる。僕は店員じゃないんだから試着でも万引きでも随意にすればいいだろうと思うのだけど、客は僕を店員と勘違いしているのであって、ここで「あ、僕も客なんですよ」なんて言うと、何て紛らわしい客なんだ。ムカつく。ちょー恥ずかしい。と、客の自尊心を傷付けることは確実であって、嘘も方便。客の自尊心を守る為に、僕も店員になりきって「空いてるとこにどうぞ」と、本物の店員の視線を気にしながら応対。 そうしているうちに彼女が試着を終えカーテンオープン。「ねぇ、似合う?」と、訊ねられ、ここで「似合わない」と言うとその後、彼女が不機嫌になるけれど、「似合う」と言うと、それを購入し、似合わない服を似合っていると勘違いして街を往来。アイツのファッションセンスはなんなんだ。と、民衆から冷たい視線を送られ、その視線でさえ、あぁ私似合う服着てるからいろんな人から見られている魅られている。なんて重ね着勘違い。優しさ残酷紙一重。よって彼女をそんな不幸な思いをさせたくない僕は、似合わないものは似合わない。僕の経済的事情をも踏まえ、似合うものも似合わないと言いつつ本日はパンツ1枚スカート1枚購入。 店を出て、「ありがとー!」と僕の腕に抱きつく彼女。彼女の高揚感に乗じて、駄目を承知で「じゃあタバコ1本吸っていい?」と、恐る恐る訊ねると、「もっちろん!」と答える彼女。ふと見上げると、雲ひとつ無い青い空に煙草の紫煙が広がっていて。 |
| 翌日 / 目次 / 先日 |