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| 2004年12月04日(土) イカない女はなぜイカない。 |
| 「私、テレビみたいに料理食べて『舌がとろけるように美味い』なんて思ったこと一度もないわ」と、言ったのは僕の妹であるが、同じ血を引いている関係、その気持ちすごく分かる。というのは、うちの家庭は、今はなんとか人並みだが、昔はひどい貧乏で、貧乏なのは僕の所為でもましてや妹の所為でもなく、これ全て両親の所為であって、教室にたたずみ、周囲の新しいゲームの話題に耳を傾けながら、どうしてうちはこんなに貧乏なんだ。どうして周りみたいに好きな物が自由に買えないんだ。いやだな。みんな努力してんのかな。僕ももう少し努力せんといかんな。と、妙な勘違いをして小学3年生から新聞配達を始め、親が小遣いを与えないものだから、欲しいゲームソフトは全て自分の稼いだ金で買い、時々は妹に駄菓子を買い与えたりしていた。と、このような境遇で育ったので、美味しいもの美味しくないものの区別がひどく曖昧で、口に入れることができ、尚且つ咀嚼できれば万事オッケーという概念を幼い頃から植えつけられたものだから、「食」は「グルメ」と結びつかず、どっちかというと「生命」に結びつくので、牛が枯草を貪る如く、ひどく概念的なものになってしまったのである。 やがて時は経ち、今じゃ雑誌のカヴァーまでとはいかないけれど、著作を出版するなどして、尚且つ看護師という職業を生業とし、経済的にも少しく余裕が出てきて、時々寿司、フランス料理、イタリア料理などを食いに行ったりするけれど、万人が口を揃えて言う「美味しい」という感じが、もうなんつーか三つ子の魂百までっつーか、どうしても感じられず、心から自然に湧いてくることもなく、相手が美味しいと言ってるから、おそらくこれは美味しいものだろう。うん。これは、美味い。と、思う。しかし舌は、僕の舌は、とろけてない。頬は、僕のホッペは、落ちてない。と、愕然とするのはきっと幼い頃が貧乏だったとかそういうことではなく、これはメディアの所為だろうと僕は思ったのである。 というのも、メディアというものは、何にしろ今あるものをそれ以上に見せようとする傾向があり、例えば露天風呂の紹介などでも、確かに露天風呂は素晴らしいのだが、辛気臭いロビーは放映しない。露天風呂から見える情緒溢れる景色を映したり、露天風呂に使っている女優の胸の谷間ばかり見せるものだから、ここはきっと素晴らしい場所なんだと視聴者は勘違いし、番組に影響されて実際そこに赴いてみると、なんだ意外と普通じゃんと軽い愕然を覚えるのである。 グルメ番組もそれと同じで、美味しいことは美味しいのだが、それを箸でつまんで口に入れてモグモグしながら、うん、美味いね。美味い美味いと思いながら普段通りに無言で食べていたら番組的にちっとも面白くない。よって芸能人達はそれらの行為を過大に表現して、舌がとろけるだの口の中に広がるだの頬が落ちるだの、わーわーきゃーきゃー喚くのである。しかしその根底は僕の妹が考えているそれと大して変わらないのである。 AVだってそう。僕も男だから、昔はAVを見ながら鼻の下を伸ばしたり、下の下を立たせたりと、そういう青春時代を過ごしてきた。それはどういうことかというと、AV女優は1本のAVで、おいまたかよ。さっきもイったじゃねぇか。と思わず突っ込みたくなるような回数のオルガニズム、通称「イって」いるのであって、男は馬鹿だから、女はセックスでイって当然イカせて必然という思い込みを抱いてしまい、彼女とセックスするに至って、なんでコイツはイカねーんだ。他の女はすぐイクってのに。と、そいつが考える「他の女」は全てAV女優のことであって、美味しいという感じを「舌がとろける」と口に出して表現する芸能人と同じく、AV女優は「気持ちいい」という感じを「イク」と表現しているのであって、情報が偏っているから偏った人間を生み出し、美味しいものも美味しくないと、イカない女は不感症だと弾劾する人間になるのである。 |
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