2004年11月13日(土)  ある温泉宿の風景。
 
「大丈夫。明日8時に起きるから。ちゃんと起こしてあげる。オヤスミ。ちょっと腕枕痛いからヤメテ」
 
プルルルル……。プルルルル……。
 
「おはようございます。お客様、朝食の準備ができております」
 
ガチャ。……。……。
 
「おいっ! おいこらオンナ! 起きろ! そして時計を見ろ! んぁぁぁ! コンタクトなんてどうでもいいよ! 今すぐ見ろ今すぐ!」
「おはよう。……。あら、もう9時」
「8時に起こすって言っただろ! 8時半に朝食でチェックアウトの前にもう1回温泉入ろうって!」
「あなたね、そうやっていつも他人のせいにして怒っているけど、たまには自分の力でなんとかしようと思わないの?」
「何寝呆けた頭で的確な苦言を呈しているんだよ! ほら、行くよ! んぁぁぁ! 浴衣がはだけてちょっと色っぽい!」
 
昨夜は香川琴平の温泉宿に宿泊して、酒を飲んで露天風呂に入って豪華な食事をたらふく食って、ガイドブックを開きながら一人でスルメをしゃぶりながらビールを飲んでいたのは、せっかく東京から四国までやってきて彼女とアバンチュールな夜を送ろうと温泉宿まで手配したというのに、彼女は彼氏よりもブラウン管に映るDr.コトーに夢中であって、2夜連続の2時間スペシャルなの。と、ビデオの予約くらいしてくればよかったのに、面倒臭いからと、僕が言うようなことを言ってテレビに夢中。退屈なので彼女の布団に潜りこむも、すぐさまはじき返される始末。CMの間だけ、ねぇー遊ぼうよぉーと甘えてくる。やってられない。眠くなってきたので明日早い時間に起こしてくれよ。露天風呂に入りたいからさ。ねぇ。ねぇって。おい。聞いてんの?
 
「大丈夫。明日8時に起きるから。ちゃんと起こしてあげる。オヤスミ。ちょっと腕枕痛いからヤメテ」
 
そして修羅場と化す朝を迎えることになる。
 
「は、は、鼻血出てきた! ね、ね、ねぇ、鼻血出てきたって!」
「わ、わ、ホントだ。わ、すげぇ出てる。た、助けて下さい!」
 
化粧の最中になぜか鼻血を出す彼女。ここぞとばかりに「世界の中心で愛を叫ぶ」の名セリフを引用する僕。今日はフェリーで小豆島に渡る。小さなレンタカーに乗って、彼女が準備した音楽をかけて、僕は二日酔いの頭痛に悩まされながら、彼女は左の鼻の穴にティッシュを詰めながら。
 

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