2004年10月13日(水)  ぱっつりヘアー。
 
最近パーマをあてて、久し振りに目も覆いたくなるようなチンチクリンな頭になっているけれど、職場での評判は上々で、なかなか似合ってる。似合ってるけど足が短い。似合ってるけど目ヤニついてる。似合ってるけど結婚できない等、不当な評価も混在されていて気分が陰。彼女に至っては、僕がパーマあてたと伝えてから、「あれ? ほんと? そういえばそうね」と言う始末。
 
本来、僕は長い髪より短い髪、過去そうしていたように坊主頭の方が好きなんだけど、彼女が昔、坊主頭の人に追い掛けられたという、僕とは全く無関係の思い出によって坊主頭が禁止されている現状、スタイリングが面倒臭いからと、気楽に坊主頭にすることができず、切るのが駄目なら伸ばすしか方法がなく、こうやって僕の意に反して伸び続ける髪を鏡で眺めながら、切りたいなぁ。さっぱりしたいなぁ。ぱっつりしたいなぁ。ぱっつり? ぱっつりって何ぞ。そうだ。松屋に行こう。と、髪のことを考えながら髪のことなどすっかり忘れ、松屋で豚めしを食し、腹が満たされたところで近所の本屋に行ったのだが、この本屋の店主、万引きを過剰に恐れている心情が丸見えで、僕のように髪の毛バサバサ、不精髭ザラザラの男などは、店に入った瞬間にマークされる。
 
いやだなぁ。この歳になって万引きなんてするはずないのにあのオジサンずっと見てるなぁ僕のこと。この視線が恋によるものだったら少しは耐えられようが、相手はオヤジ。尻毛が生えて痔核が突出してそうなオヤジ。いやだなぁ。やっぱり髪の毛を切らんといかんなぁ。と思いながら適当な文庫本を1冊取って、辺りを見回したり、突然店主の死角に潜り込むなど、少し挙動不審な態度を取って店主をドキマギさせてからレジに向かい、正当な動作で金額を支払い、本屋を出て美容院へ行った。
 
「今日はどのようになさいます?」と美容院のお姉さん。「ぱっつりとお願いします」と申す僕。「了解しましたー」と快くハサミを持ったお姉ちゃんに狼狽。「ぱ、ぱっつりって意味わかってます?」と、自分で言っておいて混乱する僕に、「なんとなくわかりまーす。もう2年この仕事やってますから」って、2年という短さも疑問だが、なんとなくわかるってのも困る。このお姉ちゃんの価値観に伴った「ぱっつりヘアー」と、僕が構想する「ぱっつりヘアー」の隔たりがあっては大変なので、「えと、サイドをもう少し短くして、トップを少し軽めにして、襟足は伸ばしたいのでそのままにしてください、あとモミアゲ少し短くして」と、えらく具体的に説明した後、「スタイリングが面倒臭いのでパーマあてて下さい」と受注。1時間後にぱっつりヘアーの完成。
 
「私ヴィレッジバンガード大好きなんですよー。後楽園と六本木にあるでしょ。あそこもまぁ楽しいんだけど、下北にあるヴィレッジバンガードが一番大好きなんですよー。男の人連れて行くとね、わかるんです。あ、この人、私と同じ感性持ってるとか、あ、この人、全然駄目だとかね。あ、私最近引っ越したんですよー。ここの近所。お客さんも近所なんでしょー。ヴィレッジバンガード、いいですよねー」
 
と、明らかに僕は誘いを受けている。今日出会ったばかりのサブカル好きの美容院のお姉さんに誘いを受けている。しかし僕には彼女がいる手前、その誘いを二つ返事で了承するわけにはいかず、「そうですねー。いいですねー。しかしあれですよねー。とまぁそんな感じで」と、巧妙に話を逸らし、下北のヴィレッジバンガードには一人で赴くことにした。ぱっつりヘアーで一人で。
 

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