2004年10月09日(土)  アイアイガサ。
 
台風22号は今日の午後、静岡・伊豆半島に上陸した後、関東南部を横断して、夜には太平洋に抜けた。
 
僕は関東南部に気象庁が統計を取り始めた1951年以降、最大級の勢力の台風を体験しに行ったのではなく、東京駅に彼女を迎えに行ったのである。四国から新幹線に乗ってきた彼女を。
 
台風真っ只中の東京駅は、台風の影響で新幹線や在来線の運休による足止めを食った乗客の怨念、鬱憤、瞋恚などが構内に充満しており、不快な湿度がそれを増大させており、これはいけない。暴動も起きかねない。だいたい皆、台風の日に所用を作るからこんな羽目になっているんだ。それを何だ逆恨みなんかしてみっともない。皆僕の彼女を見習えばいいと思う。台風が関東を上陸する前に到着する為に午前5時に家を出た彼女を見習えばいいと思う。
 
賢い彼女は正午前に東京駅に到着した。東京駅まではスムーズに来ることができたはずなのに、最後に改札口で1人で足止めを食らっていた。改札口が開かず四苦八苦して駅員の所へ走って行ってた。その一部始終を見ていた僕は何をしていたかというと、彼女へ救いの手を差し伸べるわけでもなく、なんだか面白いのでただその光景を眺めていた。そうやって約1ヶ月振りに僕たちは再会した。
 
外は大雨で、折角東京にやって来たのに、どこにも出掛けることができない。家の近所の商店街で夕食の買い物、僕が手料理を作ってあげるなんて珍しいことを言ってしまったが為に、料理の材料を買いに、といってもこの部屋に引っ越してきて、手料理なんてしたことがなく、醤油、油、塩、胡椒、マヨネーズなどの各種調味料から買い揃えなければならず、ちょっぴり面倒臭かったけれど、傍らには可愛い彼女。面倒臭いこともキミがいるから大丈夫。傘だって1本しかなくてアイアイガサになってしまうけれど、彼女がその3分の2の範囲を使用して、僕の身体の3分の2は大雨に打たれてびしょ濡れだけど大丈夫。キミがいるから。
 
キミがいるから。と、びしょ濡れになってしばらく歩いてから彼女は「ちょっと待って」と立ち止まり、バッグの中から折りたたみ傘を取り出す。遅せーよ。最初から使えよ。僕もびしょ濡れだよ。なんていつもだったら怒りを露にしてるけれど、怒りの対象が彼女となると事情は別。ハハ。傘持ってたんだね。こりゃいいや。僕も必要以上に濡れなくて済むね。といたって穏便。
 
笑顔で部屋に戻り、早速料理に取り掛かろうと思ったが、まだ午後3時。夕食にはまだ早い。何するー。何しようかー。と表面的な会話をした後、遠距離恋愛で久々の再会を果たした恋人同士がすることといえばただ一つ。
 

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