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| 2004年07月12日(月) 受容と供給。 |
| あー。今日も夜勤頑張ろうと病棟に入った僕の顔を見た途端、涙を流し喚きながら抱きついてくる患者さん。今日あったイヤな出来事、過去にあったイヤな出来事、そして将来起こるであろうイヤな出来事を次々と話し掛けてくる。抱きつかれて肩の部分が涙と鼻水でびしょびしょになった僕は、笑みを浮かべながら「受容」という意味を態度で表しながら。 その患者さんは感情のコントロールがうまくいかず、度々周囲とトラブルを起こす。トラブルの原因は簡単。周囲がその感情の波に乗ってしまうから。相手が泣いていると慰める。怒っているとなだめる。この当然と思われる行為も、実は相手の感情の波に乗っているということになる。 さて、夜も更けてきた午後10時。ボールペン片手にナース室に入ってくる。表情が硬く、手が震えている。 「もう僕は死にます」 「あら。どうやって?」 「このペンで手首と、首を刺します」 「何も今そんなことしなくても」 「ヨシミさんの前だったら安心して死ねます」 「安心してくれるのはありがたいけど、僕が死ぬとこ見て安心できるわけないじゃない」 「でももう死ぬしかないんです」 「ほら、ここでさ、○○さんと僕二人きりでさ、現に○○さんが死んじゃったとするでしょ。そのペンで首なり腕なり刺してさ、で、そっからだよ問題は。多分周囲は僕が殺したって思うよ。それは困る」 「でも僕は死ぬんだから関係ないですよ」 「うーん。でもそういうことなんだよね。○○さんが死んで僕が困る。ほら、僕もまだよくわかんないんだけど、生きてるってそういうことなんだよ。今まで何の接点もなかった人が、今後ずっと困ることになる。ね、自分だけの命じゃないって、なんかわかるような気がするでしょ」 患者さんが辛いのはわかっている。僕に「死」というカードをちらつかせて何を訴えようとしているのかも理解できる。しかし、ここで相手のペースに乗ってはいけない。相手の言葉をゆっくりと飲み込んで、相手が予想していない返事を投げ掛けて、徐々に相手の感情をコントロールしていく。精神科勤務の10年選手を甘くみてはいけない。 さて、夜も明けて○○さんも死ぬことなく、何事もなく経過した平和な夜勤が終わろうとした午前8時。○○さん、僕の目の前で突然気を失い廊下に倒れる。 ヒステリー発作。 聞いたことない人は勉強して調べてみましょう。勉強すればするほど意味がわからなくなります。さて、僕の目の前で患者が倒れて僕がとる行動。まず、ヒステリー発作での転倒は、怪我をすることは少ない。理由は、まぁ、いろいろあるわけで。で、怪我がないことはわかっているので、とりあえず患者さんの横を通り過ぎてテレビの前へ。 「あー。今日雨だって。あー。洗濯物今日も干せないよ。あー」 「看護師さん。○○さんが倒れてますよ」 「うん。○○さーん。ほらー。○○さんが昨日言ってたでしょ。明日雨降るって。当たってるよ。今日雨だって。参ったなぁ。ねぇ、○○さん、ほらちょっと見てよテレビ。そしてなんとかしてよ。晴れるって言ってよ。ねぇ、ちょっと起きてこっち来てよ」 ○○さん、起きあがり僕の横、テレビの前へ。さて、なぜ○○さんはすぐに起き上がったのか。説明するのは難しいけど、その病態、今回の場合はヒステリー発作を日常レベルに落とすということ。いわゆる特別なものとしてみないこと。説明するのは難しいけど、精神科看護とはそういうもの。教科書には載ってないことを体で学んでいくものなのです。 |
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