2004年05月10日(月)  オッパイ星人。
 
「というわけで、今度ご飯食べに行きましょうね」
「はい。わかりました。いつでもいいですよ」
「連絡するね」
「はい。じゃあ電話番号……」
「あ、いいのいいの。知ってるから」
「え」
「この前看護婦さんに聞いたから」
 
また困ったことになってしまった。そんなに困ってばかりいるのなら、「断る」ということを覚えればいいのに、この二十七年、なかなか物事を断ることができない。優柔不断な態度は相手を不幸にさせるということはわかっているのに、それでも、表面上の幸福を追求して追求して追求して。
 
なぜ、今回困ったことになったかというと、僕を食事に誘った看護婦さん、勤務する病棟が違い、どういう性格でどのような思考や嗜好を持っているのかわからないということと、看護婦さんの名前自体知らないということ。
 
この看護婦さん、僕がこの病院に働き始めてから、外来の廊下や地下の食堂ですれ違った際、フレンドリーという言葉が背中に書いてあるような笑顔で僕に話し掛けてくるのであり、フレンドリーに接せられて不快な思いなどする人はいるわけないので、僕も目には目を、歯には歯を、フレンドリーにはフレンドリーな態度を。という具合に、意味も無く表面的な笑顔を浮かべて接していたら、親密度の程度は接触の頻度と時間で決まる。いつの間にか仲良くなってしまって、今度ご飯食べに行きましょうということになったのだけれども。
 
名前がわからない。聞くタイミングを逃してしまった。今更聞けない。どうしようと思って、白衣の胸のところに貼ってあるネームを見ようと思うのだけど、ネームに書いてある字が小さいし、目を細めてネームを見ていると、「何この男ワタシの胸ばっかり見て。不精ヒゲ生やしたオッパイ星人」なんて思われたら悲しいし恥ずかしいので、あまり見れない。
 
そうしているうちに、こんなことになってしまって、ご飯食べに行ってあんなことになってしまったらどうしようと思う。
 

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