![]()
| 2004年05月09日(日) げきじょう。 |
| 馬鹿医者が。医者の後ろに立っている僕は心の中でそう毒づく。 深夜1時、患者が急変した。突然39℃代の熱発。歩行不可。右手患側振戦。流延。眼球上転。意識レベル低下。僕は看護婦に、すぐに当直医師に連絡するよう伝え、ヘルパーに吸引器、クーリングの準備。僕は救急カートを取りに行った。 患者のバイタルサインを測定していると、看護婦が帰ってきた。深夜1時30分。 「様子を見るようにとのことです。朝の回診の時に見にくるそうです」 当直の医師はたいていバイトで来ている若い医師で、僕はその医師たちを全く信用していない。世間知らずならまだいい。病院とは何か、患者とは何かさえ理解していないのだ。僕は患者のケアを看護婦に任し、医局へ走った。 医局のドアを憎しみを込めてノックする。馬鹿が。馬鹿医師が。重症に陥る危険はないとはいえ、現に患者は苦しんでいる。この患者の急変は、日常茶飯事とはいえ、日常茶飯事で片付けていいことと、そうではいけないことくらい理解できないのだろうか。指示の一つでもしてくれれば、僕達はすぐに患者の処置にあたることができるというのに。 おもむろに眉間に皺を寄せて、若い医師が医局のドアを開ける。 「さっき電話した病棟の者ですけど」 「何か」 「何かじゃないですよ。患者が急変したって伝えたはずですけど」 「あぁ、だから様子を見るようにって言ったでしょ」 「様子を見るってどういうことですか。そんな曖昧な指示で患者の様態が収まると思ってるんですか」 「……」 「とにかく患者を診て下さい。それが仕事でしょ」 強引に医局から医師を引っ張り出し、病棟へ連れていく。 こういうことは「仕事」じゃ片付けてはいけない問題なんだ。仕事の延長線上に存在する「患者」ではなく、目の前で苦しんでいる「人間」を見たときに、何を思い、どう行動するかという人間として基本的な問題なんだ。僕と年齢がそんなに変わらない若い医師の頭の中は、一体どういう風にできているのだろう。 日頃は意識して温厚になるように努めているけど、つい、こういうときに本来の激情型の性格が出てしまう。だって、しょうがないと思う。怒りの感情を表面に出さなければ、相手は決して動かないのだから。 |
| 翌日 / 目次 / 先日 |