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| 2004年04月23日(金) 大きな溜息を吐く。 |
| また婦長に呼ばれた。婦長は僕の顔を見るなり「とんでもない。本当に。あなたもそう思うでしょ」と何やら憤慨しているので、「何のことやらわかりませんけど、まぁとんでもないような気がします」と言葉を濁すと、「とんでもないわよね。まったく。まだ一人で大丈夫でしょ」と、もう何が何やら。要領を得ないので、「よくわかりません。でも一人じゃ不安なときもあります」と好い加減に話を合わせていると、「さっきね、総婦長と会ったのよ」と漸く話の筋が出てきて、あぁ、また総婦長か。いやだな。と露骨に眉間に皺を寄せた。 「でね、総婦長がね、ヨシミ君独身でしょ。そろそろ落ち着いた方がいいんじゃないかって。いい人がいるんだけどお見合いなんてどうかしら。って言うのよ」 げげ。お見合い。いやだな。一人がいいな。まだ落ち着きたくないな。という問題ではなく、職場の上の人間が、従業員のお見合いの席を設けるなんて、お節介にも程がある話で、面倒臭いなぁ。という顔を見て僕の思いを察して下さいという思いを込めて、不快感丸出しの表情。婦長さん、僕の表情から察したのか、 「でね、私言ってやったのよ。とんでもないって。お見合いなんてイヤです。って」 「お見合いなんてイヤです」というセリフにちょっと引っ掛かる。まぁイヤなことはイヤなんだけど、婦長さんがイヤと言ったのは、婦長さんの意思でイヤと言ったのであって、僕の意思を反映させるのならば「ヨシミ君もイヤだと思います」と言うべきである。 「だからもうちょっと待って下さいって言ったの。でね、ヨシミ君、私の娘なんだけど、看護婦なのよ。だから、ほら、結構かわいいのよ。ね。ヨシミ君、一人じゃ寂しいでしょ。ほら、あの、外食ばっかりでしょ。料理上手いのようちの娘。看護婦なのよ。だから、いろいろね、教えてほしいんだけど、ほら、ヨシミ君、掃除とか洗濯とか大変でしょ。うちの娘結構家事得意なのよ。だからお見合いなんてせずに、ね、総婦長の言うことは絶対じゃないんだから、気にしないで、うちの娘ね、今年で24歳になるんだけど、結構可愛いのよ。看護婦。料理得意だし、今度、木曜日、祝日、ヨシミ君休みでしょ。うちの娘も休みなの。看護婦。だから」 一気にまくしたてる婦長。うろたえる僕。見合いの話が出てたのも知らなかったし、婦長さんが娘を紹介しようとしていることも知らなかった。僕の意思が全く反映されてない。見合いをさせて、然るべき嫁をもらった後、この病院にいつまでも置いておこうという総婦長の魂胆で、結婚適齢期を迎えようとしている娘が、安心できる家庭を持たせる為に、職場では比較的真面目な僕に白刃の矢を立てたのは明確で、僕の意思とは関係なく周囲が僕を巻き込んで進行していくのは、僕の人生の特徴であって、僕はいつも、あぁ、あぁぁ、あぁぁぁと否定だか肯定だか嬉しいのか悲しいのかわからない言葉を洩らしながら家に帰って隣の部屋にまで聞こえそうな大きな溜息を吐く。 |
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