2004年04月21日(水)  日常の延長。
 
職場の後輩と仕事帰りに寄る居酒屋で、酒を飲みながら相変わらず意味のない会話に花を咲かせていた。以前と違うことは、僕はもうこの職場を辞めて、東京で働いているということ。
 
「で、先輩いつ帰ってくるんですか」
「ん? どこに?」
「鹿児島に」
「えっと、明日までいるよ」
「そういうことじゃなく」
「わかってるよ。あ、豚バラもう1本」
「先輩、焼き鳥って豚バラ以外にもいっぱいあるって知ってました?」
「お前ムカつくからもう帰れよ」
 
と、僕たちの会話は全く変わりがない。僕はまだこの職場で働いていて、明日も明後日もあの医者や看護婦さんと仕事をしているような気がする。皆、僕が久々に帰ってきたという歓迎ムードはなく、日常の延長に僕がいるような感じで僕を迎えてくれているということが嬉しかった。
 
「あれっ? ヨシミくん?」
「おっ。かすみちゃん。久し振り」
 
後ろのテーブルに高校の同級生とその友人らしき女性が座っていた。「お前らと話すことはもうない」と職場の後輩たちを冷たくあしらい、後ろのテーブルに移動する。
 
「久し振りねー。ねぇヨシミくん死んだってほんと?」
「この前誰かもそんなこと言ってた」
「岐阜の佐川急便で働いてるってほんと?」
「好い加減な噂を立てないでくれよ。あ、お友達ですか。はじめまして」
 
「はじめましてー。じゃないんだけど」
「そうよ。はじめましてじゃないわよ。リサは高校の同級生よ」
「でも科が違うからわかんないかもなー」
「リサはね」
「ちょっと待ってよ!」
「リサはね、高校の頃ヨシミくんが好きだった時期があるのよ」
「あ、あ、あ、今は違うよ! 今は違うからね!」
 
「そんな慌てなくてもいいよ。奇遇だけど僕も高校の頃キミが好きだったんだ」
「嘘吐かないでよ! さっき私にはじめましてって言ったじゃん」
「いや、僕はかすみちゃんにはじめましてって言ったんだよ」
「あなた私と3年間同じ教室だったじゃない」
「先輩、先輩! ちょっと戻ってきてください! 早く! 早く!」
「あ、後輩が呼んでる。それじゃああっちに帰ります。電話番号とか教えなくてもいいですか」
「ヨシミくんから電話するってことまずないし、こっちから電話しても繋がらないじゃない!」
「いや、リサちゃんには電話します」
「だから私はもうヨシミくんのこと好きじゃないの」
「あっちのテーブルに戻ります」
 
「先輩はいつでもどこでもオンナオンナだ。オンナと豚バラしか食わない」
「うまいこと言うねぇ。で、何?」
「で、何? ってほら、豚バラきたから呼んだだけっす」
「この豚バラのお陰でリサちゃんと離れ離れになってしまった」
 
日常の延長は、やっぱり故郷にあるものだと思った。
 

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