2004年03月13日(土)  何百人と看護婦が存在する巨大な病院の話。
 
「ヨシミさん、風邪治りました?」
 
と看護婦さん。「治りました」と僕。「あぁよかった。お大事にね」と看護婦さん。「えぇ、ありがとうございます。気を付けます」と僕。
 
看護婦さんは、勤務する病棟へ戻っていく。そして僕も勤務する病棟へ戻っていく。共に働く病棟は違う。それなのに、あの看護婦さんは僕の名前を知っている。僕はあの看護婦さんの名前を知らない。あの看護婦さんは僕が風邪をひいていたことも知っている。僕はあの看護婦さんがどの病棟で働いているということさえ知らない。
 
勤務間もない頃、僕は食堂か何処かで自己紹介でもしたのかもしれない。「はじめましてヨシミです。欠点は春先に風邪をひきやすいということです」ということを。それ以外に何が考えられよう。年の頃20代前半。明らかに僕より若い。白い白衣にピンクの予防着。茶色くて長い髪。すれ違うたびに一言二言会話を交わす。
 
ちょっとした会話が増えていく度に、名前を訊ねるタイミングを逃してしまい、今更訊ねるわけにもいかず、僕はあの看護婦さんの名前を知らないまま、挨拶をして、また自分の病棟へ戻る。
 
何百人と看護婦が存在する巨大な病院の話。
 

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