2004年02月20日(金)  魯鈍の母、白痴の店員。
 
今日も今日とて仕事帰り豚めし松屋の豚めしカウンターで豚めし小言を呟きながら豚めしセットを食しておりましたら、隣でガチャンと物音。
 
何事かと首を伸ばして見ますれば、女幼児がグラスを倒してる。混乱のあまりサラダの皿まで引っ繰り返す。年の頃三歳。母親二十八歳。母親らしからぬミニスカートに養親らしからぬ厚化粧。焦燥する幼児、息巻く母親。
 
「バカじゃないの!」
 
豚めし松屋の豚めしカウンターの何処から罵声が飛ぶ。豚めしの箸を置き、声の主を探す。「バッカじゃないの!」もう一回。声の主は、大根脚を露出したミニスカート、厚化粧では隠し切れない憮然とした表情の母親。
 
「ゴメンね」
 
養親に謝罪する女幼児。御手拭を手に取り、豚めしカウンターに散乱した日本茶、キャベツ、玉蜀黍などを不器用な手付きで払拭する。豚めしカウンターを払拭しつつ母親の顔色を伺う悲しい眼差し。「ゴメンね」もう一回。
 
「やだ」
 
憮然とする養親。どっちが子供かわからない返答。女幼児の不器用な後始末に手を貸そうともせず、豚めしカウンターで豚めしを貪っている。「ほんとバカじゃないの!」三度目の罵声。
 
僕は箸を置いたまま、阿呆の養親を睨む。魯鈍、白痴、低能、無能の女養親は僕の目線に気付かず、相変わらずの阿呆面で豚めしを食している。女幼児は半べそをかいている。涙を流すか流さないかの瀬戸際で、流したら敗北とでも思っているのか、唇を固く閉め、豚めしカウンターを御手拭で払拭している。
 
僕は、僕は本気で、このとき、僕は本気でこの女幼児を誘拐しようと思った。こんな厚顔無恥な母親の元に置くより、そう、「躾のためにやった」と虐待の言い逃れをするような母親の元に置くより、僕が誘拐して、身代金の代わりに、母親としての役割の徹底を条件に女幼児を返してやろうと思った。
 
それが不可能ならば、この女養親を犯してやろうと思った。消えることのない傷を、必要以上に残してやろうと思った。僕は、子供のためなら、例えそれが人様の子であっても、子供のためなら、それくらいできる。犯罪者になってもいい。犯罪者になっても僕は考えることができるし、その後の自分の道も、自分で決められる。子供は、可哀想だ。いつも、力に屈するしか方法がない。そして、産んでくれた親を、憎むことができない。
 
代わりに僕が憎んであげよう。すっかり食欲を失くした僕は、御手拭も取らず、これみよがしに、豚めしカウンターに散乱したキャベツと玉蜀黍を素手ですくった。
 
「あぁ、すいません」
 
店員と母親が同時にひ弱な声を挙げる。僕は聞こえない振りをして、ずっと女幼児に困った笑みを投げ掛けていた。お互い悲しい表情で、誰にも聞こえない会話をしていた。
 

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