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| 2003年12月18日(木) 午前6時の星空。 |
| 気が付けば、朝の6時だった。外へ出ると駅の方へ向かうサラリーマンや学生が肩を縮めて白い息を吐きながら歩いている。僕は「寒いんだよなぁ」と今更ながら呟いてフードを頭まで被り、持っていた手袋を連れの女性に渡す。 「いらない。私は寒さを感じるのが好きなの」 そう言ってその女性は、まだ薄暗い午前6時の空を見上げた。 午後7時。僕は帰宅の電車に揺られていた。「たまには一緒にご飯でも」短いメールに「うん」と短い返信。マンションへ一度戻り、荷物を置いて再び駅へ向かう。 午後8時。酒を飲みながら食事。彼女以外と食事をするのは久々で、彼女以外と親密に話をするのも久々だった。今日はビールは飲まずに、焼酎をゆっくりと味わうように。彼女の会話を噛み締めるように。 午後11時に店を出る。ほろ酔いの二人は、酔いを醒ます為に、それとも更に酔う為にカラオケに閉じこもる。風邪は完治してはいないけど、喉が枯れるまで、元々喉は枯れていたので、声が出なくなるまで歌い続ける。暖房の効きすぎた密室で、酒と煙草と歌と彼女と。 午前3時半。カラオケを出る。ちょっとした小旅行の旅費程度の金額を払う。酔っているので、それが高いのか安いのかわからない。終電は、とっくに出ている。それから気軽にホテルでも利用すればと思うけど、生憎僕たちはそういう関係ではないので、深夜の街を、目的もなく散歩する。唯一の目的といえば、 「一番最初に星を見つけた人が幸せになれるの」 星を探すことだけだった。星は、一つも出ていなかったけど、彼女は「あ、見つけた。ほら、ほらほら」とフラフラしながら空を指さしていた。星は、一つも出てなかったけど、彼女は見つけたと言っているので、彼女が幸せになってくれればいい。 午後4時。あと1時間もすれば始発が出る。しかしこのまま歩き続けていると、彼女はまだ目を輝かせて星を探し続けているけど、僕は凍え死んでしまいそうなので、もとい、僕の唇はカラオケを出た瞬間に紫色に染まっていて、目の下には隈ができて、死相が漂っている。 手を繋ぎたいけれど、生憎僕たちはそういう関係ではないので、少し肩を寄せ合いながら暖を取る。始発まであと1時間。道脇に佇む風俗店のような看板のマンガ喫茶。気の遠くなるような店員の説明を経て、二人ソファーに倒れ込む。 倒れ込んだのは僕だけで、彼女の肩に寄り掛かりながら、彼女は、ずっと僕に何かを話し掛けている。質問したり昔話をしたり、歌をうたったり。僕の意識の半分は眠りの世界へ。あとの半分は彼女の世界へ。 気が付けば、朝の6時だった。外へ出ると駅の方へ向かうサラリーマンや学生が肩を縮めて白い息を吐きながら歩いている。僕は「寒いんだよなぁ」と今更ながら呟いてフードを頭まで被り、持っていた手袋を連れの女性に渡す。 「いらない。私は寒さを感じるのが好きなの」 そう言ってその女性は、まだ薄暗い午前6時の空を見上げた。 |
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