![]()
| 2003年12月03日(水) 目覚めよイマジネーション。 |
| とにかく問題なのは電車内の過ごし方であって、基本的には文庫本を読んで駅の到着を待つのだが、僕も終日本が読みたいというほどの読書家でもないので、読みたくないときは中吊り広告を読んで時間をやり過ごす。しかし中吊り広告もワケのわからないものや自分に関係のないものが多いのですぐ退屈してしまう。だからこの他にこの退屈な時間の過ごし方を早急に考えなければいけなかったので考えて実践した。 乗客一人一人に焦点を当て、その人々の様々なバックグランドを想像してストーリーを作るのである。想像力の鍛錬。物を書くことに一番重要なこの鍛錬をまさか電車内でできるとは。僕の目は輝いた。その輝く目は向かいに座るサラリーマンを見ていた。よれよれのスーツに濃い髭、うつろな目は何かを見ているようであり何も見てないようでもある。想像力の鍛錬。目覚めよイマジネーション。 「仕事帰りと見せかけて実は新宿都庁の下見に行った首都圏潜伏アルカイダ」 僕はニヤリと微笑む。そして戦慄する。首都圏潜伏アルカイダめ。お前のその遠くを見るような目の先は遥か遠い祖国があるんだな。 50代主婦。毛先が四方八方に飛んだワケのわからないパーマを掛け、フェンディの変な形のハンドバッグを持っている。足が太い。実に太い。ストッキングの上に赤い靴下を履いている。想像力の鍛錬。目覚めよイマジネーション。 「買い物しようと町まで出掛けたら財布を忘れた遠近両用おしゃれ眼鏡の日本女子大名誉教授」 僕はニヤリと微笑む。そして困った顔をする。名誉教授も財布を忘れるんだなぁ。愉快な名誉教授だなぁ。みんなが笑ってる。お日様も笑ってる。ルールルルルルー今日もいい加減。 女子高生。上はコートを羽織りマフラーをぐるぐる巻いて完璧な防寒装備をしているがスカートは阿呆のように短い本末転倒な頭隠して尻隠さず的な今時の女子高生。想像力の鍛錬。目覚めよイマジネーション。 「椎名林檎と同じくらい2次方程式が好きだけど超敏感肌で自分の肌に合った化粧水を日々探し続け、昨夜もスキンケアお試しセットを試してみたけどイマイチお肌に馴染まなかった悲劇的なくるみ割り人形」 僕はニヤリと微笑む。そして悲しい顔をする。可哀想だなぁ。敏感になっている肌はバリア機能が低下して菌バランスが崩れて悪玉菌が増加してるんだよなぁ。こんな綺麗な足してるけど肌は悪玉菌に侵されてるんだよなぁ。学習環境より肌環境を整える必要があるよなぁ。 若者。若い者。ファッションに関して言わせてもらえば黒いストレートのパンツの裾が若干短い。空色の靴下にアディダスの白いシューズ。バランスがバラバラである。熱心に何を読んでいるかと思えば少年ジャンプ。想像力の鍛錬。目覚めよイマジネーション。 「秋葉系と言われることに抵抗を感じるが自分でも否定できないと密かに思っている反面、妙な誇りをも感じている。好きなタイプは? と聞かれ、女子十二楽坊とひどく漠然的なことを言う秋葉系というよりえなり系18歳」 僕はニヤリと微笑む。そしてニヤリと微笑み続ける。電車の中は集約さらた人生劇場である。文庫本などに没頭している場合ではない。物書きを目指す者は今すぐペンを捨て、町へ出て、本を捨て、乗客を見よう。 |
| 翌日 / 目次 / 先日 |