2003年11月27日(木)  矢継ぎ早。
 
新宿。とあるオフィスビル18階。応接室に通される。フカフカのソファー。フカフカフカのソファー。
 
「少々お待ち下さい」「あ、まだですね、もう少しお待ち下さい申し訳ありません」「あ、あ、今参りますので。申し訳ありませんたて込んでおりまして」「あ、あぁぁっ、茶を、お茶を、お茶をば、こぼしてしまいました。拭き、拭きますので、今すぐに、たった今すぐに」
 
兎に角、矢継ぎ早に焦燥狼狽する受け付けの女性に苦笑いしながら僕は「契約者」を待つ。今日は、来年夏に発売される原稿の契約日。彼女の小言と締切りに板ばさみにされながら最初の原稿があがったのが9月。今回も同じ出版社からオファーが来て意気揚々と印鑑持参。
 
「それじゃあここに印鑑押して戴いて、正式な契約となります」
 
素人に毛が生えたような文章しか書けない僕がかなり満足するギャランティ。一発契約更新です。
 
「どうだった?」
 
近くのカフェで待っていた彼女に不敵に微笑む。
 
「クリスマスも正月も原稿用紙に捧げることになった」
「ふぅん」
 
最近彼女はこういうことに慣れっこになった。看護師としての顔、ライターとしての顔、そして恋をしている顔。
 
僕はいろんな顔を使い分ける。あのビルの受付嬢のように矢継ぎ早に変化する僕の表情を、彼女はいつも捉えている。
 

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