2003年08月01日(金)  チョー問い合わせ中。
通勤急行といういまいちその定義がわからない電車に乗って毎朝池袋へ向かう。いつだって満員でまるで真空パックにされたように車内に詰め込まれる。サラリーマンのポマードの匂い、高校生の汗の匂い、OLの香水の匂い、過労という名の死の匂い。車内には実に様々な人間の背景が匂いとして際立ち、それが入り混じり混沌とした雰囲気を醸し出している。
 
大腿部にOLの尻が定期的に当たる。あぁ、尻が当たってるよ。柔らかいなぁウォーターベッドみたいだなぁと身動きできない狭い車内の中で考えることはこんな稚拙なことくらいしかなく、この豊満な殿部を持った女性の顔を見てみたいという衝動に駆られるけれど、先程も申し上げました通り、全く身動きができない。腕さえ挙げられない。尤も、先程から頭頂部のつむじの部分が痒くて仕方ないのだけど、この痒いことろを掻くという甚だ原始的な行為さえも許されない状況の中、体の向きを変えて柔らかい尻のOLの顔を拝むことはどだい無理な話であって、僕に背を向けて密着した状態で立っているOLの後頭部とその先の携帯電話のディスプレイが見えるだけ。
 
このOLは様々な行動と欲望が抑制されたこの窮屈な状況下、メールをうつスペースを確保し彼氏らしき相手に「おはよー。もう起きた? 私もう職場だよ(^^)」というメールを送信している。嘘じゃないか。それは嘘じゃないか。キミはまだ電車に乗ってるじゃないか。だったら何か。キミの職場はJR東日本なのか。とプライバシーに著しく侵害しているくせにメールの虚偽にまで突っ込む始末。尻が柔らかいから寛大な気持ちになっているけれど、これがもし尻が岩のように硬かったら僕は彼女の耳元で「それは嘘だろう」と絶対ささやいたと思う。尻が柔らかかったからいいものの。尻に救われたね。
 
まぁそんなことはどうでもいい。嘘のメールを送信しようが愛の告白を送ろうが恋の駆け引きを仕掛けようが僕は一向に構わない。尻触れ合うは多少の縁があっただけで、僕は彼女の名前も年齢も顔さえ知らないのだ。僕が一言もの申したいのはこの後の彼女の行動なのだ。
 
「新着メール問い合わせ中」→「新着Eメールはありません」→「新着メール問い合わせ中」→「新着Eメールはありません」→「新着メール問い合わせ中」→「新着Eメールはありません」
 
エンドレス。強迫行為並みエンドレス。メールを送信した直後から新着メール問い合わせまくり。僕は驚愕したあと憤慨しました。この女はEメールの概念を間違えて理解していると思いました。メールは絶え間ない送信→返信→送信→返信の応酬だと勘違いしていると思いました。困りました。メールはチャットじゃないと思いました。自分の時間軸でもって物事を思考しているものだから、送信相手が寝ていようが仕事中だろうがそんなことはお構いなしに新着メールを問い合わせまくる。え? どうして? どうしてメール送ったのにすぐ返ってこないの? あれ? うそ? もしかして私の携帯壊れてる? と自分の時間軸でもって物事を思考しているものだから自分の携帯が故障していると思っている。違うよ。それ間違ってるよ。送信相手はすでにメール見てるよ。まぁ、歯磨いてから返信しようとか、今の仕事が返信しようとか、寝る前でいいやとか思ってるんだよ。そんな利己的な思考は芳しくないよ尻が柔らかいからいいものの。

(つづく)


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